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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
父とクリスにからかわれたヴィヴィが膨れていると、リンクから到着したらしい母ジュリアンも、部屋に通されてきた。
「お待たせ~って、あら、匠海は?」
溌剌と現れたジュリアンは、広いそこに長男が居ない事に気付き、首を傾げる。
「ああ、少し遅いね。まあまだ20分前だし。レストランは隣のビルだしね?」
腕時計で時間を確認した父が答えた通り、双子が会社に来た理由は、家族揃って食事に行く為だった。
9月末に葉山の別荘で喧嘩した兄妹は、10月頭から毎日10分、顔を突き合わせて面談することになった。
その際、匠海の口から出た「ダッドと行った美味しい中華料理店」に、皆で行こうということになったのだ。
まあ、センター試験1週間前に、双子の壮行会をしようというのも、1つの理由でもある。
「あ! ヴィヴィ、お兄ちゃん、迎えに行ってくるっ」
嬉しそうにそう発したヴィヴィに、ジュリアンが「え? 大丈夫ぅ?」と何故か心配そうに確認してくる。
「いいよ、行っておいで。ちゃんと社員の皆に、ご挨拶するんだよ?」
娘に甘々の父の了承を得、ヴィヴィは、
「うん。クリスも行く?」
そうクリスにも声を掛けたが、いつの間にやら壁面の書棚にご執心の双子の兄は、ちらりと視線を寄越して首を振った。
「行かない……」
「そう? じゃあ、行ってきま~っす!」
先程までの緊張感はどこへやら、秘書からプレジデントフロアへのカードキーを預かったヴィヴィは、教えられた階のフロアへと降りて行った。
最上階とは違い、薄い水色と白で統一されたそのフロアは、だだっ広い吹き抜けで。
(ええと……、アセットマネジメント部の、投資戦略室……は、っと……)
秘書に渡された匠海の今いる部署を書かれたカードを手に、きょろきょろしたヴィヴィは、すぐに兄の姿を見つけることが出来た。
物凄く広いフロアの中に、突出して際立つ9頭身の長身。
おそらくこのフロアだけで80名近くいるだろうに、大好きな匠海の姿はすぐに見つけてしまえたヴィヴィだった。
(か、かっこい~~っ やっぱりお兄ちゃんって、スタイルいいな~♡)