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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章             

「会社にいる、お兄ちゃん……。カッコ良過ぎ……っ」

 黒にグレーのストライプが入った三つ揃えに、薄水色のシャツに水色のネクタイ。

 兄のすらっとしているのに細マッチョ、というスタイルを引き立たせるそのスーツ姿に、ヴィヴィはもう見惚れて瞳が♡になりそうだった。

 スーツの内ポケットにカードキーを直すその仕草さえ、絵になっていて。

(肩幅広くて……、抱き付きたくなる……。お兄ちゃんの首筋に、顔を埋めて……ぎゅうってしたいっ)

「ヴィクトリア。ほっぺ赤いぞ?」

 にやりと嗤った匠海が、ヴィヴィを至近距離で見下ろしてくる。

(あ、 “ヴィクトリア” って、呼んだ……)

 2人きりの時しか呼ばれないその名前に、ヴィヴィの胸がとくりと波打つ。

「やんっ 見ないで……」

 ヴィヴィは熱く火照る頬を、両手で隠し兄に背を向けた。

「いいや、見せろ。このカチューシャ、似合ってるな?」

 意地悪のスイッチが入ったらしい匠海が、強引にヴィヴィの肩を掴んで自分に向き直させる。

「やだぁ~……っ」

 恥ずかしがるヴィヴィの両腕を、大きな掌で包み込んだ匠海は上半身を屈め、妹のおでこに金色の前髪の上から口付けした。

「お……っ!? お兄ちゃんっ ここ、会社っ!!」

 あまりに突然の出来事に、驚嘆したヴィヴィがそう兄に主張するが、

「俺ら、兄妹だからな。別に外でおでこにキスしてようが、誰も何も思わないって」

 軽くそうあしらわれたヴィヴィは、「お兄ちゃんがそう言うなら、そういうものかも?」と簡単に納得した。

「……そう、かな……?」

「ああ」

 わしゃわしゃと金色の頭を撫で回す匠海に、ヴィヴィはその手を掴んでおねだりする。

「じゃ、もう一回、して?」

(さっきのは、驚きが勝っちゃったから、もう1回、感じさせて……?)

「可愛いな。でももう、お仕舞」

 ふっと笑った匠海はそう言って、ヴィヴィの頭から掌を放してしまった。

「え~……」

「ほら、着いたぞ」

 エレベーターがプレジデントフロアに到着し、兄に促されたヴィヴィは素直に「は~い」と従った。

(ま、いいか。お家帰ったら、また一杯くっつくんだ~っ うふふっ)

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