この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第103章
一緒にお風呂に入ってほくほくしたヴィヴィは、まるでお姫様のように兄に抱かれて寝室へと戻り。
最愛の匠海に抱き枕にされながら眠りに就ける――そう幸せに浸っていたヴィヴィの目の前に、小さな紙袋が垂らされた。
「ん……? 合格梅守……?」
紙袋の表に書かれていた文字を読み上げたヴィヴィに、匠海が頷く。
「実は真行寺と一緒に、行ってきたんだ。鎌倉にある荏柄天(えがらてん)神社――」
その後教えてくれた兄の説明によると、荏柄天神社は太宰府天満宮、北野天満宮と並び日本三大天満宮の1つで、元日に初詣に行った湯島天神と同じく、学業の神様・菅原道真(すがわらのみちざね)公が祭ってあるらしい。
特にこの “合格梅守” は、受験生に人気で。
梅は道真公のシンボルの花なのだそうだ。
金色の長方形の金属片の中に、紅梅と白梅が描かれているそれは、とても可愛い。
「じゃあ、マドカもクリスも、同じの持ってるの?」
ヴィヴィのその問いに、匠海は優しい微笑みと共に頷いて寄越す。
「ああ。3人とも受かるといいね?」
「うんっ ありがとう! いいお兄ちゃん持って、マドカもクリスも、もちろんヴィヴィも、物凄い幸せ者ですっ♡」
匠海と真行寺が自分達の為だけに、わざわざ鎌倉までお守りを買いに行ってくれたなんて。
感激したヴィヴィは、文字通り兄に飛び付いて、匠海の顔中にキスの雨を降らせたのだった。
(や~~んっ ホント幸せっ! で、でも、こんなに応援して貰ってるんだから、東大落ちたら悲惨……。目も当てられないだろうな……)
そう。
喜んでばかりいられないのも、受験生の運命(さだめ)――なのであった。