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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
「始め――!」
試験監督のその号令によって、双子の受験本番の火蓋は切って落とされた。
で、ヴィヴィはどうだったかというと――、
実は最初の科目で、「始め――」と言われた時になって、今まで全然緊張していなかったにも関わらず、急に武者震いが襲って来て。
しばらくの間は指が震え、マークシートを塗り潰すのさえ苦労した。
(だ、大丈夫っ クリスも円も、カレンもアレックスも、ジェシカもジェイソンも。みんな一緒に頑張ってるんだから――っ)
昂ぶる心をそう落ち着けながら、最後に思ったのは、お守りの事。
(お兄ちゃんと真行寺さんがくれた、合格梅守。ちゃんと持って来てる……。大丈夫、出来る――っ!)
そして今握っているのは、元日に拝殿祈祷を受けた湯島天神で貰った、学業成就鉛筆。
鉛筆を両手で握り締めながら「ふ~~」と深く息を吐いたヴィヴィは、それからはいつも通り集中して、午前中の試験を終えた。
センター試験 第1日目は、
9:30~11:40 世界史Aと倫理・政治・経済
昼食を挟み、
13:30~14:20 国語
15:10~16:30 英語の筆記試験
17:10~18:10 英語のリスニング試験
全てを終えた双子は帰りの車の中でうとうとしたが、すぐに屋敷に帰り着き。
その頃には予備校のHPに、英語の筆記試験までの解答速報が出ていたので、すぐさま自己採点を行った。
「どんな感じ、で……?」とクリス。
「……こんな感じ、で……」とヴィヴィ。
妹の自己採点を確認したクリスは、驚きで灰色の瞳を見張った。
「これは、また……。えらく、頑張ったね……」
そうクリスが零す様に、あんなに出だしで緊張しまくったヴィヴィだったが、さすが幼少からプレッシャーと闘ってきただけあって、土壇場での根性の座り具合は常軌を逸していた。
「だよねっ!? やったやったぁ~っ!!」
クリスの書斎でそう手放しに喜び、椅子の上で変な小躍りを始めたヴィヴィを、双子の兄はぴしゃりと制す。
「なに喜んでるの……。まだ明日が、あるでしょう……。ヴィヴィの苦手な、数学がタンマリ……」
そう現実を突き付けられたヴィヴィは、挙げていた両手をへなへなと降ろし、
「ふぁ~~い……」
唇を尖らせながらそうへこたれたのだった。