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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章              

 待っていてくれた両親と匠海とディナーを摂った双子は、朝比奈が止めるのも訊かず、やはりリンクへと出掛けてしまって。

 呆れた母やコーチ陣にレッスンをつけて貰って、いつもよりは早く帰宅した。

「お前ら……、明日もセンターあるのに……。強者(つわもの)過ぎ……」

 玄関ホールで朝比奈と共に双子を迎え入れた匠海にもそう呆れられ、双子は顔を見合わせた。

「だって、いつも通りの生活を心がけたほうが、平常心でいられるし……」

「ん……。それに、身体動かさないと、気持ち悪い……」

 次の試合は3月半ばの世界選手権なので、センター試験のために1~2日練習を休もうが影響はないのだが、やっぱり双子は(筋肉馬鹿ならぬ)スケート馬鹿なのだった。

 互いに就寝挨拶を交わして私室に戻り、ヴィヴィは手早くスケート靴を磨いていた。

 すると、クリスとヴィヴィの部屋を繋ぐ扉から、匠海が現れた。

 バスルームから入浴準備を整えた朝比奈が出てくる前で、匠海はヴィヴィの腰かけている白皮のソファーに腰を下ろした。

「お兄ちゃん。クリスとお話し、してたの?」

「うん。2人とも1日目の結果が良かったみたいで、安心した」

 胸から上が千鳥格子となっている凝ったセーターを纏った匠海が、微笑みながらそう呟く。

「うん。クリスは天才児だからね~。試験中、寝なかったんだね~」

 それだけが心配だったヴィヴィが呟いた言葉に、匠海が吹き出す。

「ははっ そうだな。ヴィヴィも頑張ったな。明日もいつも通りにやれば、お前なら絶対に大丈夫だよ」

「ん。お兄ちゃん達が貰って来てくれた “お守り” もあるし、ヴィヴィ頑張る~」

 そう言ってにっこり笑ったヴィヴィに、匠海が瞳を細めながら両腕を差し出してきた。

「ああ。おいで……」

 朝比奈のいる前で、兄と抱擁を交わす。

 その事に一瞬の躊躇を覚えたヴィヴィだったが、すぐに思い直す。

(よく考えれば、お付き合いする前から、ヴィヴィはお兄ちゃんにべったりで。みんなの前でもよく抱き着いてたし……)

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