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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
そして、10分後に戻ってきたメールがこちら。
『おはよう。
昨夜はヴィクトリアの可愛い寝顔、
20分も堪能させて貰ったから、満足しているよ。
今夜は駄目。
というか、今週の日曜日に またってことで』
匠海にメールで今宵の逢瀬をきっぱり断られたヴィヴィは、その場で、
「え゛ぇ~~っ!?」
と不満の声を上げたが、不思議そうに自分を見つめてくるクリスに気付き、笑って誤魔化した。
(え~~、今週末までおあずけ? ってことは、2週間もお兄ちゃんと出来ないの? さ、さみしい……)
最愛の兄と身も心も共有し合える大切な時間を、自分の不注意で台無しにしてしまったヴィヴィは、朝食のサンドウィッチを小動物の如くもそもそ齧り、ぼろぼろパン屑を零しまくり。
「ああ、お嬢様は。もうすぐ大学生になられますのに、いつまでも世話が焼けますねぇ」
そう面倒臭そうな発言をしながらも、何故か嬉々としてヴィヴィの世話を焼いてくる朝比奈と、いつまでもしゅんと凹んでいる主と。
そんな主従を見つめながら、もう1人の主・クリスは「平和、だ……」と呟いていたのだった。
センター試験から3日後――1月20日(水)。
この日は “センターリサーチ” の結果が分かる日だった。
“センターリサーチ” とは(円の通っている)代ゼミが、センター試験の自己採点結果を全国規模で集計・分析し、“各大学の入試を受けられるか” の合否判定の事。
双子も朝比奈に頼んで自分達の自己採点報告書を代ゼミに提出しており、それを今日の昼から返却が始まった代ゼミへと、取りに行って貰った。
朝比奈が手渡してくれた封筒を、双子は互いに開封し、真っ先に合否判定に目をやる。
「……ふうん……」
まるで他人事の様にそう呟いたクリスに対し、ヴィヴィはぱっと明るい表情を浮かべた直後、
「……ふうん……(泣)」
そう沈んだ声を上げた。
「ん……? どうしたの……?」
クリスのその問いに、ヴィヴィは同封されていた “大学別得点分布表” を指さす。
「……なんだ、A判定(安全合格圏)じゃない……?」
「AはAでも、最下層のA判定だもんっ」
クリスの指摘に、ヴィヴィは不安を露わにそう喚いた。