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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章              

 それを知ってヴィヴィは物凄く感激して、朝比奈に飛び付こうとし――すんでのところで止められた。

『このくらいの事は当然です。それでなくても私はスケートも出来ませんし、東大受験されるお2人の勉強を見て差し上げる事も出来ません。何か些細な事でも、お役に立てると嬉しいのです』

 主の両肩を掌で包んでそう答えてくれた朝比奈に、ヴィヴィは「そんな事を思っていたの?」と驚いた。

『朝比奈……』

 朝比奈は日本人の両親の仕事の都合で、幼少の頃からフランスと日本の両方で過ごし。

 フランスのカレッジを出て執事学校へ進み、篠宮家へと縁あってやって来た。

 よってフランス語と英語はペラペラで、双子がBSTで外国語としてフランス語を学び始めた頃から、よい家庭教師として活躍してくれた。



「いつもありがとう、朝比奈」

 レモンとジンジャーの香りですっきりしながら、自分の執事ににっこり微笑んだヴィヴィに、朝比奈は嬉しそうに瞳を細める。

「お役に立てて、光栄です」

 謙虚にそう答える朝比奈に、ヴィヴィは頷く。

(ヴィヴィが大人になっても、もっと大人になっておばあちゃんになっても、朝比奈に傍に居て欲しい……)

 18歳も年上の彼は、自分より先に亡くなってしまうだろうけれど。

 それでもずっと、仕えて欲しいと思う。

(あ、でも、執事の年収って、どれくらい……? 1千万円は余裕で超えるって、どっかで聞いたな……。ヴィヴィ、この屋敷出て自活した時、そんなに払える程も収入あるかな……?)

 経済観念は無いくせに、妙に現実的なヴィヴィなのだった。







 その30分後。

「ぁんっ ……っ はぅっ ダメぇ……っ」

 漆黒のベッドの上で、ヴィヴィは悩ましげな嬌声を上げていた。

「駄目、じゃないだろう? お前が『2週間ぶりだから、沢山愛して』って、可愛くおねだりしてくれたのに」

 兄の指摘通り、先週末はセンター試験を終えて眠りこけてしまったヴィヴィのせいで、週に一度の兄妹の逢瀬はおじゃんになり。

 2週間の間、兄に愛される事を待ち侘びていたヴィヴィは、そんな恥ずかしいおねだりをしてしまった。

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