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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章              

「こっちから男子を誘うって……、それ、女子としてかなり、恥ずべき行為、かと……?」

(ふうん、そうなんだ? でも、カレンとクリスが一緒にプロムに行くには、その方法しかないだろうし……)

「そ? まあ取り敢えず行って来る~。結果は後でメールするね?」

「え、あ、……う、うん……」

 戸惑った様子のカレンに、ヴィヴィはにかっと笑うとその肩をポンと叩いた。

「じゃあ、また来週! バイバ~イっ」

「See you……」

 そこでカレンと別れたヴィヴィは、ダッフルコートを着込み鞄を持つと、教室にはもういなかったアレックスを探しに、校内を散策する事にした。

 バスケ部のアレックスの事だから、きっと体育館にいるだろう。

 そう目算を立てて向かえば、やはり体育館にいたアレックスに、ヴィヴィは臆する事無く近付いていく。

 ワックスで磨き上げられた体育館の床に、キュキュッという靴底のゴムが擦れる音が響く。

「アレックス~~、お~い」

 間延びした声でヴィヴィが呼べば、制服姿でロングシュートを打っていたアレックスが、くるりとこちらを振り向いた。

 うん、今日もくりんくりんの金色の巻き毛が素敵だ。

「あれ……、クリスと帰ったんじゃなかったのか?」

 不思議そうに尋ねてくるアレックスに、ヴィヴィは肩から掛けたバックの紐を握り直し、言葉を濁す。

「ん~、もう帰るんだけどね」

「ふうん。で? 俺に何か用だった?」

 ていんていんと大きな掌でバスケットボールをドリブルしながら尋ねてくるアレックスに、ヴィヴィは単刀直入に切り出した。

「うん。ヴィヴィねぇ、いないんだよね~」

「いない? 何が?」

 上履きの爪先でトントンと床を叩きながら、ヴィヴィは続ける。

「んっと、プロムの相手」

「……え……、って、えぇっ!? あれ……、クリスと行くんじゃ、ないのか?」

 何故か大げさにも見えるくらい驚いた様子のアレックスに、ヴィヴィはふるふると金色の頭を振ってみせる。

「ん~ん。別に約束はしてないもん」

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