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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
「じゃ、じゃあっ 俺が誘ったら、ヴィヴィ、一緒に行ってくれたり……したりするっ!?」
20cmの身長差から、ボールを抱えたアレックスが前のめりになって確認してくる言葉に、ヴィヴィはこくりと頷く。
「うん。したりする。……って言うか、誘ってくれて良かったぁ~」
心底ほっとした様子で、コートの胸を両手で押さえたヴィヴィに、訳の分からないアレックスが、
「……へ……?」
と間抜けな声を返してきた。
「だって、カレンが「女子から男子誘うなんて、恥ずべき行為」って言うからさ~」
「……う~ん、そういうもの、かも……?」
カレンの言い分にそう同意したアレックスに、ヴィヴィは笑い、この話に終止符を打つ。
「じゃあ、そういう事で! まだプロムまで1ヶ月もあるし、また来週にでも打ち合わせ、しよ?」
そう確認しながらも帰る気満々のヴィヴィは、後ろ向きに歩き出し。
「あ、ああ。分かった」
「じゃあね~。バイバ~イ!」
3m程離れた場所から、片手を上げて手を振ったヴィヴィに、アレックスも長い腕をひょいと上げ、
「うんっ また、来週――っ」
そう、少し興奮した表情で別れを告げた。
そこでアレックスと別れたヴィヴィは、腕時計で時間を確認し、焦った様子で校門へと向かって駆けて行った。
「ヴィヴィ、遅かったね……?」
もう既に迎えのベンツに乗り込んでいたクリスにそう尋ねられ、ヴィヴィは言葉を濁した。
「うん。ちょっと、用事が出来てね」
双子を乗せた車は、篠宮邸へ向けて静かに走り出した。
体育館から走って来た為に、前髪がぼさぼさだったらしい。
クリスが指で梳かし付けてくれたそれに、ヴィヴィは擽ったそうに笑うと、本題を切り出した。
「えっと、クリス……。クリスはプロムの相手、いる?」
「え……? どうして……?」
不思議そうにそう返してきたクリスに、ヴィヴィは身体をそちらに向けて視線を合わせる。
「ヴィヴィね、プロムに行く相手、出来ちゃったの。だからクリスも、相手そろそろ探した方が、いいんじゃないかと思って」
(だって、カレンが言うには、クリス以外でプロムの相手が決まっていない男子は、アレックスしかいない → 今はクリスしかいない、になっちゃってるんだもの)