この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
「それもそうだね……。うん、誰か頑張って、誘ってみる……」
妹の気持ちが伝わったのか、そう前向きな言葉を発したクリスに、ヴィヴィは嬉しそうに頷いたのだった。
そして1週間後――2月8日(月)の登校日。
ヴィヴィの目の前で、
「プロム……、一緒に行く……?」
クリスにそう誘われたカレンは、瞬時に真っ赤になって頷いた。
「……~~っ う、うんっ」
カレンの大人っぽい顔がまるで夢見る少女の様に綻び、隠しおおせていないその喜びは、全身から零れ落ちるかの様だった。
そしてヴィヴィはと言えば、
(お~、クリス、頑張ったね~。偉いぞ! さすが男の子っ)
そう双子の兄の頑張りを褒め湛えていたのだが――、急にその表情が固まった。
「………………?」
まるで錆び付いたブリキの人形の如く、ギギギと鈍い効果音が似合いそうなくらい、不自然に首を傾げたヴィヴィは、頭の中にふと浮かんだもやもやを、突き詰めて考えてみる。
(ん……? ん~~? あれ? カレン、どうしてクリスとプロム行きたいんだろう? っていうか、なんでクリスに誘われて、あんな可愛らしい反応を……?)
クリスが他の男子に呼ばれて行ってしまい、ヴィヴィは咄嗟にその疑問をカレンにぶつけようとしたが。
「ヴィヴィっっ 本当に、本当にっ ありがとう――っ!!」
押し殺した声でそう小さく叫び、ヴィヴィの両手をがしっと握り締めてきたカレンの表情は、この世の幸せの全てを独り占めしたかの様なそれで。
(え……、まさか……)
「カ……、カレン、ちゃん……?」
恐る恐る親友を呼べば、
「ん? なになにっ?」
幸せ真っ只中のカレンは、そう食い付いてきて。
「ま、まさかとは、思うけれど……」
「え?」
ヴィヴィは周りをきょろきょろと確認すると、カレンだけに聞こえる小さな声で疑問を投げた。
「…………クリスのこと、好き、なの…………?」
途端にカレンの頬、ならぬ耳まで真っ赤になり、
「……~~っ!? う、うん……っ」
そう頷いた親友に、ヴィヴィの灰色の瞳は点になった。
「……へえ……」
(…………へえ…………)