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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章              

 4分間――いつもヴィヴィがFPを滑っている競技時間。

 それをこんなにも長く感じたのは、生まれて初めての事かもしれない。

「どう~? そろそろ出る~?」

 能天気な声でそう尋ねてくるのは、双子の母 兼 コーチのジュリアンで。

 揃って首を横に振る双子を見比べて、ジュリアンは苦笑した。

「まあ、気持ちは分からないでもないけれど……。別に生きるか死ぬかの瀬戸際って訳じゃないんだから、そんな顔しなさんな、ヴィヴィ」 

 そう言いながら、可愛い顔に酷い表情を浮かべる娘の頭をポンと叩いてくる母に、ヴィヴィはこくりと頷く。

 少し落ち着こうと深呼吸をすれば、いつの間にか早まっていた鼓動を認識するに至り、あまり落ち着く事も出来ず。

「あ……、出た……」

 クリスのその声に、ヴィヴィは隣からぱっとPC画面を覗き込んだ。

 もう自分のセンター試験の「試験場コード」も「受験番号」も暗記している。

 クリスがPCの検索機能を使い、ヴィヴィの5ケタの「受験番号」を入力した途端――、

「……――っ!?」

 検索結果を見て息を呑んだヴィヴィと、

「あ、あった……」

 いつも通りの様子のクリス。

「え? えっ? どっちのがあったの? クリス? ヴィヴィっ?」

 先程は娘にあんな事を言ったくせに、興奮した様子でそう尋ねてくるジュリアンに、クリスはPCから顔を上げて口を開いた。

「ヴィヴィの。一次通過したよ……」

 双子の兄と母のやり取りの最中、ヴィヴィはPC画面を目を皿の様にして受験票と見比べていた。

 間違いない。

 6ケタの「試験場コード」も5ケタの「受験番号」も、自分のものと寸分違わず同じものが、東大のHPに載っている。

「……と、通った……」

 そう呟いたヴィヴィは気が抜けて、ふらりと椅子の背凭れに細い背筋を倒した。

(よ、良かった……。本当に、良かった……っ 1次も通過しなかったら、ホント申し訳無くて、周りに顔向け出来なかった……っ)

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