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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
クリスのお陰で一応落ち着いたヴィヴィは、リンクへ行ってレッスンを受け、帰宅し就寝支度を終え。
ボア素材のミニのルームウェアとニーハイソックスを纏ったヴィヴィは、リビングの冷蔵庫から取り出したものを抱え、匠海の部屋へと向かった。
それが今現在、寝室で起こっている事の40分前で――。
翌日がバレンタインだったので、(ネットで購入した)兄の好きなシャンパンとチョコレートをプレゼントすれば、匠海は物凄く喜んでくれた。
「美味しい?」
「うん。とっても美味しいよ。こんなに忙しいヴィクトリアが、俺の為に用意して、プレゼントしてくれたんだからね」
細長いシャンパングラスから唇を離して微笑む匠海に、ヴィヴィは茶色のバスローブ越しにネコの様にすりすりと自分の躰を擦り付ける。
「良かった……」
そう囁くヴィヴィを、匠海がその細過ぎる肩を抱き寄せながらグラスを傾けていた。
「あ~~ん」
チョコレートの箱からグレープフルーツピールのチョコを摘まみ、兄の唇へと持って行けば、その大き目の唇がぱくりと食べてくれるのが面白くて。
「甘酸っぱくて少し苦い……、シャンパンにも良く合う。ヴィクトリアも食べる?」
腕の中の妹の顔を覗き込みながら楽しそうにそう尋ねてくる匠海に、ヴィヴィは微かに首を振った。
「ううん……。大丈夫……」
その表情は、無理して笑っているのがバレバレのもので。
「……ヴィクトリア。クリスも言ってただろう? 慶応、受かる筈だって」
妹の金色の頭を撫でながらそう諭す兄に、ヴィヴィはこくりと頷く。
「お酒って、美味しいの?」
「え? ああ、もちろん」
兄がそう言うと、細やかな泡が立ち昇っていくその黄みがかった液体が、とても旨そうに見えて。
「ヴィヴィ、飲みたいな」
(お酒飲んだら、少しは気持ち、楽になるかな……)
「馬鹿。お前は駄目。まだ17歳だろうが」
案の定、そうぴしゃりと妹を窘めた匠海に、ヴィヴィは艶々の唇をツンと尖らせて迫る。
「え~……、じゃあ、ひと口だけ!」
「ダ~メ~。『お子ちゃま』にはまだ早い~」
匠海のその間延びした言い方が、更にガキ扱いされている気がして、ヴィヴィはむぅとへそを曲げた。