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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
「バカっ まだ本命が残ってるんだろうが!」
「そうさ。礼はその時に聞きたかったよ」
「まあでも、第2希望が受かってると、かなり楽な気持ちで東大本試、臨めるな~」
皆が口々にそう言い合い、頭を起こしたヴィヴィの前には、
「「「東大かぁ~~……」」」
と、あさっての方向を見つめながら呆ける、3人の男がそこには居た。
「ヴィ~ヴィ~~……っ!!」
母の呼ぶ声に振り向けば、ヴィヴィはその胸の中にがしっと抱き締められた。
「よ、良かった~~……っ」
そう安堵の声を上げたジュリアンの声は、涙声で。
「え? マム、泣いてるの!?」
驚いたヴィヴィがその顔を覗き込めば、
「娘がどんだけ苦労して、勉強とスケート両立してきたか! 私だってちゃんと分かってるわよっ」
ぼろぼろ涙を流す母に、ヴィヴィは感激し、自分も「ふぇ~~~んっ」とガキっぽく声を上げて泣いたのだった。
なのに、その2日後――2月20日(土)。
ヴィヴィは自分の寝室で、不服そうに唇を尖らせていた。
先程まで、いつも通り添い寝してくれていた匠海が発した言葉が、その原因だった。
『あ……、ちなみに、東大の前期試験が終わるまで、セックス禁止な?』
いきなり一方的に言い渡されたその言葉に、ヴィヴィは当然嫌がったが、
『異論は聞きません、受け付けません。はい、これ、決定――』
そう宣言し、就寝のキスを寄越して出て行ってしまったのだ。
(まあね……、ヴィヴィの事思って、そう言ってくれてるんだろうけどさ……。寂しひ……)
兄の宣言の真意を本当は分かっているヴィヴィは、尖らせていた唇をむににと横に引き伸ばし、羽毛布団を両手で握り締める。
「欲しがりません、勝つまでは――っ!!」
そう戦時中の日本兵の如き標語で自分を抑え付けたヴィヴィは、とっとと寝ようと目蓋を瞑り。
その20秒後には夢の住人と化していたのだった。
というか、東大の前期入試はこの3~4日後なので、たったそれだけの期間、我慢すればいいだけなのに、大げさなヴィヴィなのだった――。