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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
そして迎えた、大本命の 東京大学 文科Ⅰ類 前期試験 本番。
前日の登校日――。
何故か高等部の全校ミーティング(たった60名)が多目的ルームで執り行われ、双子は「東大受験 壮行式」なるものを下級生達からして貰い。
嬉し恥ずかし元気とパワーを頂いて、試験会場である東大駒場キャンパスへと向かったのだった。
門前まで駆けつけてくれた、入試を終えたクラスメイト達や担任、予備校の教師陣に見送られ、双子は会場へと向かった。
教室が離れた双子は、廊下の隅で向かい合い、ぼそぼそと囁き合う。
「ヴィヴィ……。論述の心得3か条――」
クリスがヴィヴィを真っ直ぐに見つめながら、それを要求してくる。
もう何度も何度も復唱した事だが、これを怠っては、本試験で手痛いミスをする事になる。
「① 設問をしっかり読むこと
② 設問の『直接の答え』となる答案を書くこと
③ 色々書きたい気持ちを一旦静め、何を書くべ きかを再考すること
ですっ」
きちんと落ち着いて復唱してみせた妹の両手を、クリスがぎゅっと握ってくる。
「大丈夫。ヴィヴィは出来る子。困難にも打ち勝てる子。自分を信じて、ついでに僕も信じて、頑張ってらっしゃい」
自分も今から絶対に失敗出来ない一発本番の入試を受ける癖に、妹の心配ばかりするクリスに、ヴィヴィは大きく頷く。
「うん。クリスは超天才児だけど、いつも裏でコツコツ努力を積み重ねてたの、ヴィヴィは見てた。だから、クリスも自分を信じて、頑張ってね!」
そうしっかりした口調でクリスに言葉を贈ったヴィヴィは、背伸びをしてついでにおでこにキスも贈っておいた。
「……千人力……」
ぼそりとそう呟いたクリスに苦笑したヴィヴィは、「じゃっ」と両手を離すと自分の教室へと入って行ったのだった。
そして同じ教室に真行寺 円を見つけ、小さく手を振ってみせたヴィヴィに、どうやら廊下での双子のやり取りを目にしていたらしい彼女は、苦笑いをしながら手を振り返してきたのだった。