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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
スポーツ は 早稲田大学にバスケットボールで推薦が決まった、アレックスが。
芸術 は 五輪金メダルに輝いた、ヴィヴィが。
そして、すべての分野での優秀な生徒「オールラウンダー」には、もちろんクリスが選ばれた。
各人が学園長の前まで赴き、学園のシンボル――ライオン君を模した金のトロフィーを頂き、簡単なスピーチを行うのが慣例で。
アレックスが面白おかしくスピーチをして会場を沸かせた後、名前を呼ばれたヴィヴィは、学園長の前まで進み出て、トロフィーを受け取り、聴衆に向けて両手で抱え上げ、にっこり笑った。
皆がわっと盛り上がる中、父グレコリーと母ジュリアンが立ち上がり、カメラとビデオに娘の晴れ姿を収めている姿を確認し、ヴィヴィは苦笑する。
スピーチ台の前に立ったヴィヴィは、総勢150名を見渡し、薄い唇を開いた。
「え~。私はずっと、BST7不思議――“学園のシンボル、ライオン君の銅像が、夜になると遠吠えをする” を信じていましたが……、結局今日まで、己の目で確認することはありませんでした」
ライオン君のトロフィーを持ち上げながら発した、ヴィヴィのくだらないジョークに、在校生がどっと受ける。
「まあでも、自分が一番怖かったのは “トイレのジェニファー” で。それはきっと大学に進学してもお婆ちゃんになっても、トイレに入るたびにビクついて、変わらないと思いますが――」
またどっと笑ってくれた聴衆に向かって、ヴィヴィはゆったりと微笑む。
「4歳~17歳までを過ごしたこのBSTで、自分が一番楽しかったのは、そういう他愛もない話をみんなとしている時間でした。スケートに時間を取られるようになり、遠征や試合・合宿で学校に来られない時でも、みんなが送ってくれた暖かい動画やメール、登校した時に迎え入れてくれる笑顔に、いつも救われていました。はぁ、マズイ……涙が……っ」
色々と思い出が蘇り涙を零してしまったヴィヴィに、カレンがティッシュを持ってやって来て、その鼻頭に1枚押し当てて戻っていく様子に、聴衆がまた笑う。