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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
「そう言われれば、ヴィヴィちゃん、少し目と鼻の頭が赤いですね?」
「はは……。いいセレモニーだったので、少しだけ泣いちゃいました……」
鋭い突っ込みに、ヴィヴィは頬をポリポリ掻き、苦笑いを浮かべてそう事実を認めた。
「お2人とも、卒業証書を見せて頂けますか?」
その催促に、クリスが脇に挟んでいた紺色のバインダーを開きながら説明する。
「卒業証書じゃなくて、成績評価証明書、ですけれど」
前述の通り、BSTは英国の教育制度の学校であるため、“卒業” という概念が無く、学期末に行われる英国レベル統一試験の結果を以て、就学終了となる。
よって双子には、
・GCSE Aレベル「高等教育終了資格」
・GCE Aレベル & ASレベル「日本の大学1・2年の教養課程レベルに相当」
の成績評価証明書が授与された。
ヴィヴィも同じものを見せながら、カメラに向かって誇らしげに微笑んだ。
「ヴィヴィちゃん、泣いてしまったという事は、よほど楽しい学校生活だったんですね?」
アナウンサーの質問に、ヴィヴィは金の頭に乗せた角帽を押さえながら深く頷く。
「はい! もう幼稚舎から高等部までずぅ~~っとなので、クラスメイトみんなが幼馴染で……。だ、だからっ 離れる時が来るなんて、考えた事も無か――っ」
やはり今のヴィヴィには、もう明日からこの学び舎で、みんなとバカ出来ないという事実が受け入れられなくて。
込み上げる涙を必死に堪えるヴィヴィに、隣のクリスがその肩をポンポン撫でる。
「どうどう……。もう泣かないでね……」
「ごめん、なさいぃ~~……」
ティッシュで涙を押さえるヴィヴィに、目がチカチカするくらいカメラのフラッシュが焚かれていた。
(な、泣いてる写真……、撮らないでぇ~~……)
「クリス君は、どんな学校生活でしたが?」
「そうですね。学業面では自分の興味のある分野を、突き詰めて勉強する機会を持てて。生活面では、何か馬鹿な事ばかりやったり言ったりしていましたが、それが一番思い出に残っています」
そのクリスのしっかりした返事に、ヴィヴィは心の中で「以下同文」と付け加えた。