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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
生粋のお嬢のヴィヴィだが、両親の「飛び抜けて贅沢はさせない」という教育方針で、ここまで育てられてきた。
なので、これほどゴージャスなジュエリーを目の前で見るのは初めてで、度肝を抜かれたヴィヴィは、そのまばゆさに灰色の瞳が釘付けになっていた。
「奥様からの贈り物です。婚約された時に旦那様から頂いたお品ですが「デザインが20~30代向けでそろそろ使わなくなってきたから、ヴィヴィにあげるわ」……との事です」
朝比奈のその返事に、ヴィヴィは大きな瞳を見張った。
「えぇ~~っ!? マムが? これを、ヴィヴィにぃ~~っ!?」
「はい。母親から愛娘へと受け継がれるジュエリー――素晴らしいですね」
落ち着いた声音でしんみり発した朝比奈に、ヴィヴィはしばらくぽかんとしていたが、その視線はゆっくりとジュエリーへと降りていく。
「さ、触っても、いい……?」
「勿論でございます」
朝比奈の許しを得て、ヴィヴィは何故か人差し指の先でつんつんとつつき。
「これ……、ダイヤモンド……、だよね……?」
指の腹を押し返す何にも負けない硬度は、宝石の王様の証。
「はい。鑑定書をご覧になられますか? ちなみに資産価値と致しましては、約2――」
「言わなくていいっ!!」
朝比奈の言葉を遮ったヴィヴィに、執事は不思議そうに見返してくる。
「左様でございますか?」
「う、うん……。ね、値段なんか聞いたら、ヴィヴィ、怖くて着けられないと思うからぁ~~っ」
そう情けない返事を寄越した主に苦笑しながら、朝比奈は白手袋をした手でネックレスを取り上げると、ヴィヴィの腰かけているソファーの後ろへと移動し、その細い首に着けてくれた。
「……思ったより、重くない……?」
もちろん十分に石の重みを感じるのだが、豪奢な見た目ほど重くはなくて。
「腕の良い職人が、着ける人の事を慮って創り上げた逸品ですからね」
「そっかぁ~……。あ、ピアスは自分で着けるね」
朝比奈に鏡を持って貰いながら直径5cmの縦長のピアスを着けたヴィヴィは、こちらも柔らかく揺れるティアドロップのダイヤに見惚れた。