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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章              

「綺麗……。マムは?」

「先程、リンクを出る時間が遅くなるとのご連絡がありました。パーティーには遅れますが、なるべく早く会場へ向かうとの事です」

 朝比奈のその返答に、ヴィヴィはゆっくりと頷く。

「そっかあ~。ちゃんとお礼、言わなきゃ」

「ええ。とてもよくお似合いですよ、お嬢様。しかし、このネックレスはお外しになられた方が、良いかと」

「え……?」

 執事のその指摘に、鏡を覗き込めば、プラチナのシルバーの輝きにそぐわない、ゴールドの輝きを放つ兄からの贈り物が映り。

「あ、そう、だよ……ね」

(ん~~、でも、もう肌身離さず、身に着けていたいし……。あ、そうだっ)

 名案を思い付いたヴィヴィは、朝比奈にお願いして馬蹄チャームのネックレスを外して貰い。

 礼を言ってそれを細い手首に巻いたヴィヴィは、華奢なブレスレットになった金色の鎖に満足そうに微笑んだ。

 その後、ティアラを着けてもらい、白のロンググローブをしていると、ノック音と共に五十嵐が現れた。

「お嬢様。アレックス様がお着きになられました」

 執事の言葉に白石のマントルピースの上の置時計を確認すると、もう17時を回っていた。

 女性の支度というのは、やはり時間が掛かるものだ。

「は~い、ありがとう」

 明るく返事をしたヴィヴィに、朝比奈が白い手袋に包まれた掌を差し出してくる。

 下手をしたら踏んでしまう長さの裾なので、ヴィヴィは自分の執事の手を借りて、私室を出ると階下へと向かった。

 朝比奈に支えられながら階段を下りていると、下からアレックスの声が聞こえてきた。

「ヴィヴィ……」

 自分を呼ぶ声に階段の上から見下ろせば、吹き抜けの玄関ホールに立ち尽くしていたアレックスは、バスケで鍛えたその長身に、漆黒の燕尾服を纏っていた。

「あ、アレックス。お迎えありがと~! いやぁ、男の子は大変だねぇ」

 階段を降り切ったヴィヴィは、朝比奈に礼を言って手を離すと、すたすたとアレックスに近づいていく。

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