この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
「綺麗……。マムは?」
「先程、リンクを出る時間が遅くなるとのご連絡がありました。パーティーには遅れますが、なるべく早く会場へ向かうとの事です」
朝比奈のその返答に、ヴィヴィはゆっくりと頷く。
「そっかあ~。ちゃんとお礼、言わなきゃ」
「ええ。とてもよくお似合いですよ、お嬢様。しかし、このネックレスはお外しになられた方が、良いかと」
「え……?」
執事のその指摘に、鏡を覗き込めば、プラチナのシルバーの輝きにそぐわない、ゴールドの輝きを放つ兄からの贈り物が映り。
「あ、そう、だよ……ね」
(ん~~、でも、もう肌身離さず、身に着けていたいし……。あ、そうだっ)
名案を思い付いたヴィヴィは、朝比奈にお願いして馬蹄チャームのネックレスを外して貰い。
礼を言ってそれを細い手首に巻いたヴィヴィは、華奢なブレスレットになった金色の鎖に満足そうに微笑んだ。
その後、ティアラを着けてもらい、白のロンググローブをしていると、ノック音と共に五十嵐が現れた。
「お嬢様。アレックス様がお着きになられました」
執事の言葉に白石のマントルピースの上の置時計を確認すると、もう17時を回っていた。
女性の支度というのは、やはり時間が掛かるものだ。
「は~い、ありがとう」
明るく返事をしたヴィヴィに、朝比奈が白い手袋に包まれた掌を差し出してくる。
下手をしたら踏んでしまう長さの裾なので、ヴィヴィは自分の執事の手を借りて、私室を出ると階下へと向かった。
朝比奈に支えられながら階段を下りていると、下からアレックスの声が聞こえてきた。
「ヴィヴィ……」
自分を呼ぶ声に階段の上から見下ろせば、吹き抜けの玄関ホールに立ち尽くしていたアレックスは、バスケで鍛えたその長身に、漆黒の燕尾服を纏っていた。
「あ、アレックス。お迎えありがと~! いやぁ、男の子は大変だねぇ」
階段を降り切ったヴィヴィは、朝比奈に礼を言って手を離すと、すたすたとアレックスに近づいていく。