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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
「じゃ、じゃあ、行こうか……っ」
何故かどもるアレックスに、ヴィヴィは頷いて玄関ホールから出ると、車寄せに待たせてあったリムジンに乗り込んだ。
「いってきま~す」
ウィンドウを下げてそう執事に挨拶したヴィヴィに、朝比奈は銀縁眼鏡越しの暖かな微笑みと共に2人を見送った。
「いってらっしゃいませ、アレックス様、お嬢様」
「青山セントグレース大聖堂まで、で宜しいですね?」
リムジンの運転手に、アレックスが「はい。お願いします」と答え。
2人を乗せたリムジンはどんどん日が陰っていく松濤を抜け、青山通りを進んで行く。
後部座席の2人はいつも通りバカ話をしながら、けれど、アレックスは何故か緊張した面持ちで。
ヴィヴィが「どうしたんだろう?」と心の中で首を傾げていると、車は目的地へと到着した。
完全に日が落ちた夜の表参道で、一際目立つ荘厳な建造物。
大聖堂という名に相応しい、地上28mの尖塔はライトアップされ、その陰影が織りなす姿は乙女なら必ず虜になる壮麗さ。
そしてエントランスに灯された無数のランプにも、ヴィヴィの薄い胸が躍った。
今宵、BST卒業生のプロムの舞台は、グラマシー・スイート――白亜の一軒家だ。
ドアマンによって開けられた背の高い扉をくぐれば、眩く光り輝くバカラのシャンデリアが出迎えてくれる。
上階に広大なリビング、下階にバンケットルームが広がる2フロア構成だった。
開始まで30分もあるが、その場には大勢のPTAが揃っており、各々教諭陣や他のPTAと和やかに語り合っていた。
「あ、ヴィヴィ! アレックス! こっちこっち~」
上から降ってきたケイトの声に振り仰げば、吹き抜けになっている2階から、クラスメイト達が2人を手招いていた。
顔を見合わせた2人は面白そうに笑い、皆が呼んでいる階上へと上がって行った。
広いリビングスペースには沢山ソファーセットが配され、その奥、ウェイティングルームには本日の主役の卒業生20名が揃った。