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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
男子は、白の蝶ネクタイにウェストコート、そして漆黒の燕尾服。
女子は、床すれすれの白のロングドレス、ティアラとロンググローブは「10名で同じものを着けたい」とフランスの服飾専門学校に進路が決まっているケイトが、皆の分を安く調達してきてくれた。
プロムが始まるまで大分時間があったので、皆は写真を撮り合ったり、入場の列の順番を決めたり、ダンスの一通りの流れを復唱したりして過ごしていた。
そしてその様子を、普段は結婚式場として使われているこの施設お抱えカメラマンが、ずっと映像と写真として撮り続けていた。
「みんなでお揃いのティアラで、写真撮ろう~っ!」
ジェシカのその呼び掛けに、カメラマンの前で、ティアラを両人差し指で指し示す滑稽なポーズをとる女子10名に、男子達が、
「いや……、もっとおしとやかに撮ろうよ」
と突っ込めば、
「おしとやかバージョンもお願いしま~す♡」
とケイトがカメラマンにお願いし、皆が淑女の微笑みを浮かべて写真に納まった。
「お前達、そろそろ入場の時間だぞ~?」
担任のその呼び掛けに、皆が「は~~いっ」とお利口さんな返事をあげながら、男女ペアの1列に並んだ。
先頭は卒業生を率いる、燕尾服を纏い、その手にステッキを持った担任のケインズ先生。
その後ろには委員長のペアを先頭に、クリス & カレン、そして最後尾にはアレックス & ヴィヴィが続いた。
「準備整いました。入場します」
式場のスタッフが無線にそう呼び掛け、担任がウェイティングルームから出て行くのに皆が続く。
広い2階建ての会場に鳴り響くのは、カール・ミヒャエル・ツィーラー作曲『扇のポロネーズ』。
実はBSTのプロムは、他の学校の物とはだいぶ異なっていた。
今から10年前、オーパンバルに憧れた卒業生達が行ったこの正装(男子:燕尾服、女子:白のロングドレス)が慣例となり、今年の卒業生もそれに倣っていた。
オーパンバル――オーストリアのウィーンで毎年開かれる舞踏会。
美しく着飾ったデビュタント達が初々しく踊り、周りと一緒にその社交界デビューを祝うそれは、世界各国の乙女の憧れ。