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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章              

 ちなみに、舞踏会にも様々な種類があり、軍人舞踏会の様に、医師、カフェハウスオーナー、お菓子屋、法律家、それぞれの職種にちなんだユニークなものまで開催されている、一般人でも手の届く舞踏会だったりする。

 流れている入場用の『扇のポロネーズ』は、ゆっくりな4分の3拍子で、その堂々たる曲調からもオーパンバルでよく用いられる。

 白い壁やインテリアに映える、黒い鉄の装飾が凝ったアールデコ調の階段を、3拍子に合わせて一段ずつ降りてくる卒業生の姿に、ヴィヴィからはまだ見えない階下からは、大きな歓声と拍手が沸き起こっている。

(そういえば、お兄ちゃん、もう着いたかな……?)

 荷物はクロークに預けてしまいスマホも確認出来ず、ヴィヴィはそう思いながらもアレックスの白グローブの上に手を添えながら、ゆっくりと皆に着いて行った。

 黒い絨毯張りの階段を、「1,2,3」と踏み締めながら下りて行く最後尾のヴィヴィから、やっと全体が見渡せるまでになった。

 4つの大きなシャンデリアがまばゆい階下のバンケットホールには、開け放たれたガーデンにまで溢れ出るくらいの100名もの招待客。

 皆が思い思いに着飾り、大人達は既にシャンパンを傾けていた。

 そしてその中に、飛び抜けてスタイルの良い男を見つけ、ヴィヴィはうっとりと微笑んだ。

 光沢のある漆黒のスーツに黒シャツ、シルバーの蝶ネクタイを結わず垂らした出で立ちの匠海。

 エントランス付近の壁に背を預けながら、ダッドとたまに小声で話している姿だけでも絵になる、自分の実の兄。

 ふと視線を上げた匠海と目が合い、ヴィヴィの薄い胸がとくりと震えた。

(やっぱり、お兄ちゃんは、綺麗……だな……)

 その美しい男が今や自分の恋人だったりするので、世の中本当にどうなるか分からない。

 下から支えてくれていたアレックスの手に力が籠められ、そちらに視線を移すと、

「もう、階段終わり」

と小声で指摘してくれた。

 うっかり兄ばかり見つめていたヴィヴィは、「ありがと」と小声で礼を言うと、まっすぐと前を見つめた。

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