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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章              

 けれど呆れた表情の匠海は、バッサリと切り捨ててくる。

「馬鹿。年齢や学歴の問題じゃない。 “精神年齢” の話をしている」

「……っ!? 余計気に障る~っ」

 すっかり調子に乗っていたヴィヴィは、グローブに包まれた細い腕をぶんぶん振り回してそう抗議した。

「あはは。ほら、喧嘩してないで、行っておいで」

「うん。ダッド、また後でね~?」

 父にそう別れを告げて、兄妹は階下を目指す。

「ヴィヴィ、転ぶなよ?」

 階段に差し掛かったところで、先を歩く匠海がヴィヴィを振り返ってそう注意してくる。

「もう、『お子ちゃま』扱いばっかりぃっ」

 ぷうと頬を膨らませたヴィヴィに苦笑した匠海は、光沢のある黒のスーツから伸びた大きな掌を、妹に向けて差し出した。

「ほら」

 一段下から手を差し出され、それに白のグローブに包まれた掌を乗せたヴィヴィは、何故か頬が火照った。

「あ、ありがとう」

「似合ってるな、ドレス。ヴィヴィの可憐さを引き立たせてくれて」

 先を降りて妹を誘導する匠海のその言葉に、ヴィヴィは驚く。

「え? ほ、本当……?」

(お兄ちゃん、ヴィヴィがメイクするの大嫌いだから、てっきり「似合わない」って言われるかと……)

 そんなヴィヴィに身体を寄せた匠海は、その耳元に掠れ声で囁いた。

「ああ。今すぐ寝室に連れ込んで、朝までねっとり愛したいくらい、綺麗だよ」

「~~っ へ、変態っ」

 いつも通りのやり取りを交わしながら階下へ降りた2人だったが、ヴィヴィのビスチェの胸の奥は、凄い動悸がしていた。

(き、綺麗って、言われちゃった……っ えへへ)

 目の前に立っている兄のほうが何十倍も綺麗だが、大好きな人に褒められるのはやはり一番嬉しかった。

「あ、One Direction の Oneway or Anotherだっ! お兄ちゃん、踊ろうっ」

 DJが次にかけた曲に反応したヴィヴィは、兄の手を引っ張ってダンスの輪に入ると、美しいドレス姿に不釣り合いな、きれっきれのダンスを踊り、匠海にも同じ事を強要して楽しんだ。

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