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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章              

 アレックスの抱き締める力は強いし、周りのクラスメイトからは、

「ひゅ~ひゅ~っ! アレックス、とうとうやったな~~っ!!」

「キャ~~っ アレックス、度胸ありすぎっ!!」

 そう囃し立てる声ばかりで。

 なんだか、知らなかったのは自分ばかりで、周りの皆はアレックスの気持ちを既に知っているようだった。

(え゛……。また、ヴィヴィだけ、知らなかったの……?)

 どんだけ恋愛事に疎いんだ……と落ち込んだのも一瞬、ヴィヴィはこの状況を何とかせねばと、焦ってグロスを塗った薄い唇を開いた。

「アレックス……。あの、ヴィヴィには、好――」

「知ってる。好きな奴いるって……。ごめん、でもどうしても、卒業するまでに、気持ちを伝えたかったっ」

 小声で囁いたヴィヴィの言葉に被せてそう囁いてきたアレックスに、ヴィヴィはこれ以上もう何も言えなくて。

「アレックス……」

 ようやく強い抱擁を解いたアレックスは、ヴィヴィから身体を離し、その顔を覗き込んでくる。

「本当にごめん……。これからも、その……、友達で、いて、くれるか……?」

「もちろんっ ……あの、アレックス……?」

「うん?」

「ありがとう。ヴィヴィ、好きになってくれて」

 我が儘で自己中で能天気で鈍感で。

 どこにも異性を惹き付ける女としての魅力を見い出せない自分を、アレックスに好きと言われ、ヴィヴィは素直に嬉しかった。

 クリスと喧嘩していた1週間の間、先輩や後輩に受けた告白は重荷でしかなくて、まったく喜びを見い出せなかった自分。

 あの時の自分は、本当に自分の事ばかりに必死で、周りが見えていなくて、周囲を気遣う余裕すらなかった。

 その頃に比べ、今の自分は匠海に愛されているという自負が、自分の自信へと繋がり、周りから示される愛情に素直に喜べるまでになっていた。

 無邪気に微笑んで告白の礼を述べたヴィヴィに、アレックスが瞳を見開き、

「……っ やっぱ好きだっ!!」

 またがばっと抱き締められたヴィヴィは、

「え゛……っ!? あ、ちょっと待って~~っ」

 そう情けない声をあげ、アレックスを落ち着かせようと試みる。

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