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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
「クリス、ちゃんとカレンをエスコート出来たか?」
匠海のその問いに、クリスは「う~~ん」と唸りながら首を傾げ、
「たぶん、ね……。そそうはしなかった、と思う……」
クリスのその少し自信なさげな返答に、ヴィヴィは笑う。
「大丈夫だよ。今日のカレン、すごく楽しそうで幸せそうだったもん。クリスのエスコートのおかげだよ」
実際別れた途端、カレンから、
『も~っ 超幸せなプロムだった!
クリス カッコ良かったし、すごく優しかったの。
ヴィヴィ本当にありがとう!』
そうメールが来ていたくらいだ。
妹のその労いの言葉に、クリスはその頭にキスを落とす。
「ありがと……。ヴィヴィとも踊れたし、本望……。っていうか、眠い……」
灰色の瞳をしぱしぱさせ始めたクリスに、ヴィヴィは自分のドレスの膝に車のシートと共布の皮のクッションを乗せると、その上に燕尾服姿の双子の兄の頭を導いた。
すぐにす~す~と気持ち良さそうな寝息を立てるクリスに、ヴィヴィと匠海が顔を見合わせて苦笑する。
「俺、ヴィヴィの写真、いっぱい撮った。待ち受けにしようかな?」
そう小声で囁いてくる兄に、ヴィヴィは驚く。
「えっと……、ヴィヴィがチェックして “いい写真” だったら、してもいいよ、待ち受け」
ふふんと鼻で笑いながら高飛車に返してきた妹の返事に、匠海はくっくっくと苦笑していたのだった。
屋敷に帰り着き、朝比奈と五十嵐の出迎えを受けた兄弟妹は、3階へと上がり就寝の挨拶を交わし、それぞれの私室へと戻った。
朝比奈に「眠そうなクリスのお世話からしてあげて?」とお願いし。
とりあえずファーのボレロを脱いで、リビングの白皮のソファーに腰を下ろしたヴィヴィは、「ふぅ~~」と気の抜けた息を吐きながら、身に着けていた高価なネックレスとピアスを外した。
それだけで大分解放された気がして、まだティアラを乗っけたままの金色の頭をぐるりと回し、まとっていた白のロンググローブも抜き取る。
細い腕に巻いていた金色の鎖に瞳を細めたヴィヴィは、腕から外していつも通り首に着けた。