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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
咽喉の渇きを覚え、冷蔵庫からガス入りのミネラルウォーターを出して飲んでいると、クリスの部屋へと通じる扉から朝比奈が入ってきた。
「お嬢様。すぐにバスの準備をしますので、しばらくお待ち下さいね」
「うん。あ~、リンク行きたいな~……」
早朝リンクへ赴き、今ももう22:30を過ぎているのにそんな事を言い出す主に、朝比奈が呆れた様に口を開きかけた、その時。
ノックもなしに扉を開けてきた匠海に、主従は同時にそちらを振り返った。
「お兄ちゃん、どうかしたの?」
きょとんとそう尋ねるヴィヴィに、スーツ姿のままの匠海が微笑んで手招きする。
「ヴィヴィ、おいで」
「え? あ、うん」
咄嗟にそう返事をしたヴィヴィだったが、
(あれ……? なんか、機嫌、悪い……?)
そうすぐに判るほど、匠海の灰色の瞳は険しくて。
すくっとソファーを立ち上がったヴィヴィを引き留めるように、何かを感じたらしい朝比奈が口を挟む。
「匠海様。お嬢様は本日、卒業式もあってお疲――」
「朝比奈。今日は下がっていい」
執事の言葉をさっと切り捨てた匠海に、ヴィヴィが瞳を見張って驚く前で、
「……畏まりました」
そう発して目礼して出ていく朝比奈の後姿を、ヴィヴィはただ見送る事しか出来なかった。
静かに扉が閉められた直後、匠海が冷ややかな声でヴィヴィに命令してきた。
「ヴィクトリア。さっさと来なさい――」
兄のその温度を感じさせない声音に、ヴィヴィは一瞬竦み上がり。
けれど、匠海の指示に背く筈も無いヴィヴィは、白のパンプスのまま兄の傍に寄って行った。
剥き出しの二の腕を掴み上げられ、痛くて眉を潜めたヴィヴィを引き摺り込んだ匠海は、互いの部屋を繋ぐ扉を施錠し。
そして予想通り連れて行かれた寝室も施錠した匠海は、ヴィヴィの腕を引っ張ってキングサイズのベッドの上に放り投げた。
「きゃっ」
ポスンと軽い音を立てて俯せに倒れたヴィヴィが驚いていると、兄は、腰から下をベッドからはみ出させた妹のドレスの長い裾を捲り上げてきた。