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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第104章
信頼――結婚も出産も子育ても許されない兄妹の2人には、それこそが一番大事で “互いの繋がりを確かめ合える唯一のもの” なのに。
「……いや。今日のは……、お前のせいじゃ、ないし」
確かに、今日のはアレックス1人の暴走だった気がするが、ヴィヴィはそれは考えない事にした。
彼をすぐに振り払えば匠海は満足しただろうが、それでは楽しいあの場が、台無しになってしまっていただろうし。
「許して、くれる?」
「うん。ごめん、大人げなくて……」
そんな可愛い返事を寄越して来た匠海に、ヴィヴィの小さな胸がきゅうんと疼いた。
(ああ、もう何て可愛いんだろう――っ)
「ううん。ヴィヴィだって同じ状況だったら、もうメラメラ嫉妬したもんっ!!」
ヴィヴィはそう喚きながら、兄の首に縋っていた両腕を解き、匠海の顔の前でその細い指をわきわきしてみせた。
(お兄ちゃんが他の女の人を熱く抱擁していたら、ヴィヴィ、その場で絶叫するか、引き剥がすか――う~ん、あんまり考えたくないな)
「だろう――?」
妹の言葉に同意した兄が、くるりと端正な顔をこちらに向けてくる。
(あ、やっとこっち、見てくれた……)
その表情はまるで拗ねた少年の様。
6歳も年上で立派な社会人で、彫りの深い兄の顔に浮かぶのは、紛れもない嫉妬と、無理やり奪ってしまった妹の躰に対する、幾ばくかの後悔の念。
兄のきりっとした二重目蓋の奥の瞳を覗き込んだヴィヴィは、にっこりと微笑んだ。
(もう、甘えん坊なんだから……。可愛い♡)
「うん。お兄ちゃん、お風呂入ろう?」
「え……? あ、ああ……」
いきなり方向転換する妹の言葉に、匠海は呆気に取られたようにそう頷く。
「でね……?」
そう続けたヴィヴィだったが、さすがに恥かしくなって。
匠海の耳に唇を寄せて囁いたのは、更に兄を求める甘い誘い文句。
「それでね……、もう一度、ヴィヴィの事……、愛して、くれる……?」
(あんな怖い顔したお兄ちゃんじゃなくて、ヴィヴィの大好きな幸せそうな顔したお兄ちゃんに、ヴィヴィ、愛されたいの)