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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章          

(ヴィヴィは、お兄ちゃんを守ってあげたい……。早く大人になって、お兄ちゃんと対等の関係になって。守って、受け止めて……。悩みや苦悩も共有して――そう。お兄ちゃん1人だけを苦しめることは、絶対にさせたくない)

 そして、兄も自分にそうして欲しいから『鞭』を与えたのだろうし。

 ヴィヴィは匠海の両頬を湯で暖まった掌で包み込むと、ゆっくりと薄い唇を開いた。

「……ヴィヴィ、早く大人になるね……?」

「……え……?」

「早く大人になって、ヴィヴィがお兄ちゃんを守ってあげるの」

 真剣にそう発したヴィヴィは、心を決めたように頷いた後、ふわりと微笑んだ。

 けれど、兄の返事は意外なもので、

「…………、気持ちは嬉しいけれど、別にヴィクトリアは今のままでいいよ」

「え~~……?」

 まさかの返しに眉をハの字にして不服そうな妹に、匠海は苦笑する。

「だって、お前は今のままで十分可愛いし、良い子だし、聡いし」

 そう囁いた匠海は、何故かにやりと悪そうな笑みを浮かべた。

「それに、こんなにエッチで、気持ち良い事、大好きだし?」

「……~~っ!?」

(ひ、ヒドイっ ヴィヴィ、真面目に考えて、本当にそう思って言ったのに!)

 心の中でそう喚きながら頬を膨らませたヴィヴィに、匠海は更に煽ってくる。

「さっきのヴィクトリア、本当に可愛かった。俺の上であんなに跳ねて……。あ、やばい、もう一度したくなってきた」

「~~っ!? もう無理っ」

 自分を抱き寄せようと両腕を伸ばしてくる兄に、ヴィヴィはその逞しい胸を押し返して止めた。

「そうだな。来週の今頃、お前は世界選手権で戦ってるんだからな。じゃあもう、上がろうか」

 そう話を切り上げた兄に、ヴィヴィはしぶしぶ匠海の腰から立ち上がろうとしたが、すぐにその腰を抱き寄せられた。

「駄目。100数えたら上がろうね。ほら、ちゃんと肩まで浸かって」

 兄のその言い分は、まるで幼児に言い聞かす様なもので。

「『お子ちゃま』扱い、しないで~~っ」 

 そう喚きながらもヴィヴィは言われた通り、「い~ち、に~い……」と100まで数え上げ、風呂から上がったのだった。

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