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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
互いに躰を拭き合いっこし、バスローブを羽織った匠海に、バスタオルを巻き付けただけのヴィヴィは横抱きされてベッドへと運び込まれ。
先程まで激しく与え合ったそこで寝りに就くのはなんだが気恥ずかしいが、また全裸になった兄妹は、暖かな羽毛布団の中でうっとりと抱き締め合った。
(えへへ……。やっぱり幸せだ~っ)
本当は先程まで兄を受け入れていたそこが、まだ気持ちの良い疼きを覚えていて。
もうちょっとしたいな、と思う気持ちもあったりするが、それも世界選手権から帰国してのお楽しみ――とヴィヴィは自分を言い聞かせた。
「ヴィクトリア……。少し、真面目な話していいか?」
もう眠りに就くと思っていた兄のその言葉に、ヴィヴィは驚いて逞しい胸板にくっつけていた顔を上げる。
腕の中の妹を覗き込んでいる匠海の表情は、先程までと違って、少し強張っていて。
「え? う、うん……。なあに?」
ヴィヴィの薄い胸の奥が、微かにざわつく。
(真面目な、話……?)
「……もしかしたら、ヴィクトリアは覚えてないかも、しれないけれど――」
その話し始めで匠海が語り出した内容は、こうだった。
すべては昨年の、
1月 3日――匠海が留学先から東京へ里帰りしていた最終日。
8月12日――ロンドンの父の実家へ里帰りした滞在3日目。
そして、
9月26日――兄妹で葉山の別荘へと出かけた前日。
この3日間に共通する出来事を、匠海はずっと懸念していたという。
そう。
情事の最中、ヴィヴィが記憶を無くしてしまい、翌朝になってもそれ以降も、それが戻る事は無いという事実を。
「結局その後、ヴィクトリア、記憶が戻ったか?」
「………………」
兄の確認に、ヴィヴィは困惑顔で静かに首を振る。
「心療内科……、いや。カウンセリングにでも、行くか……?」
「……ううん」
自分の長い髪を梳きながらそう尋ねてくる兄に、ヴィヴィは否定の返事を返した。
「でも……」
「……何も、説明、出来ないもん……」
実兄を強姦して、躰の関係を結ぶようになり、その際にたまに記憶を無くす事があった――。
そんな事実、どうやって医師やカウンセラーに、説明すればいいのだ。