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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
「ん……。ごめんね、心配かけてたんだね、ずっと……」
東大に合格が決まったこのタイミングで、ヴィヴィに確認してきた事からも、匠海の中でこの問題はとても気にかかる事で、ずっと心配し。
けれど、受験と試合で一杯いっぱいのヴィヴィを見て、今はその話を切り出すべき時ではない――そう想って待っていてくれたのだろう。
「……俺のせい、だからね……」
そう自分を責める匠海に、ヴィヴィは瞳を細めてその言葉を否定する。
「……違う。ヴィヴィ……、全てはヴィヴィのせい、だもん……」
兄妹の間に起った一連の事――その全ての起因を作ったのは、紛れもない自分。
「………………、しかし、あれだな~~」
空気をがらりと変えるような明るい声でそう発し、妹の頭を撫でる匠海に、ヴィヴィは「ん?」と不思議そうに首を傾げる。
「俺、止められるかな……?」
「……はい……?」
兄のその言葉に、ヴィヴィは途端に訝しげな表情を浮かべる。
「だって、『おにいちゃま』って甘えてくるヴィクトリア、死ぬほど可愛いんだよ。もう全身全霊で俺に甘えきってて……。それに、凄く “欲しがり屋さん” だし」
「……~~っ」
「『おにいちゃま、もっと、もっと』って、もうそれはそれは、録画して残しておきたいくらい暴力的に愛くるしいんだよ」
「………………」
兄のあまりの言い様に、ヴィヴィは心底ドン引きし、呆れ返って無言を貫く。
(し、心配してたんじゃ、なかったの……? なんか、楽しんでない……?)
「ああ、そうか! 録画しておけばいいんだな。ヴィクトリアが今度そうなったら、動画撮っておくよ。そうしたらお前もどんな風になっているか、自分で確認出来るし。俺は俺で、それをお宝映像――」
「変態っ!!」
名案を思い付いたと心底面白そうに続ける匠海を、ヴィヴィはそう一喝し、その美しく引き締まった頬のラインを、両手で掴んで思いっきり引っ張ってやった。
「いだだだっ」
ほっぺを抓られて痛がる兄に、ヴィヴィは「ふんっ」と捨て台詞ならぬ捨て鼻息を吐き出すと、くるりとベッドの中で背を向けた。