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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
ちなみにバッジテストとは、フィギュアの試合に出る際に必要な “級” の事。
初級~8級まであり、初級が一番下の級で、全日本選手権に出るためには7級を持っていることが最低条件とされている。
そして8級はコーチになりたい人しか取らないため、双子も7級しか持っていない。
インカレで入賞するかしないかレベル――というのは、あまり強くない部という意味だ。
「練習は高田馬場で月・金曜日の18時~20時までやってるらしいが。まあ、そっちは無視して参加しなくていいからさ」
「え……? ではどうして、こちらの所属に?」
てっきり、その部の実力の底上げをしたいから勧誘されたとばかり思っていたのに、濱田総長の意外な言葉に、ヴィヴィは微かに首を傾げてみせた。
「そりゃあ、宣伝効果があるからだよ、ヴィクトリア君! キミ達が国内の試合でコールされる時、「篠宮クリス君、東京大学所属」って呼ばれたら、これ以上ないほどの宣伝効果でしょう?」
「「………………」」
(わあ……、金の亡者……)
確かに総長の言う通り、他の大学はわざわざCMを流してまで、大学の宣伝をしている。
ヴィヴィも、昭和大学、東海大学、東邦大学のCMを、以前目にしたことがあった。
東大はそういった事はしていないらしいので、双子が広告塔になれば、儲けもの――といったところか。
「もちろんタダで、とは言わないよ。キミ達、年に何回も試合やらショーやらで、講義や試験、受けられないだろう? うちの所属になってくれたら、色々と手厚く優遇してあげるよ?」
そう利点を提示し、ばちんとウィンクを寄越してくる総長に、ヴィヴィは乾いた笑いを零した。
「はは。そ、そうですか……」
(えっと……、そういうのは、追試受ければいいだけ、の気がするんだけど……)
「それに、知ってるかい? うちの1~2年生はクラス制度を取っていてね。キミ達の文科Ⅰ類も、文科Ⅱ類と合わせて27クラスに振り分けられる。クリス君――、キミ、ヴィクトリア君と同じクラスになりたくないかい?」
「なりたいです」
総長の甘言に速攻喰い付いたクリスに、ヴィヴィはぶんと音がしそうなほど激しく、隣の双子の兄を振り返った。