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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
「うちの所属になってくれたら、同じクラスにしてあげるよ?」
「なります」
むしろ食い気味でそう即答したクリスを、牧野マネージャーが呆れ顔で制す。
「……こら、クリス。勝手に答えるんじゃないよ」
その後も、あの手この手で双子を懐柔しようとしてくる総長に、牧野は「後日、改めてお返事させて頂きます」と逃げて、3人は東大を後にしたのだった。
そしてスケ連や、スポンサー、(現在の所属の)松濤国際SCのトップの了解を得て、双子は東京大学に所属を移す事となった。
ちなみに、松濤国際SCのトップ = 持ち主の篠宮ホールディングスのグループCEO。
……そういう事、だ。
双子はその日の内にHPで、東京大学に進路が決定し、所属を移したことを報告した。
その日から取材依頼が馬鹿みたいに殺到し、関係各所からは篠宮邸に大量の胡蝶蘭の鉢植えが届き。
テレビを点ければ『オリンピック金メダリストの双子が、またもや信じられない快挙を達成――東大文Ⅰにストレート合格!!』と、ニュースや情報番組を騒がせていた。
しかし、さすがに世界選手権まで1週間を切っていた双子は、「その試合後に各社の取材を受けるから」という条件付きで、とりあえずの取材は免除して貰ったのだった。
3月14日(日)。
翌日から世界選手権へ向けて旅立とうとしている、その日。
休日ということもあり、世の中は “ホワイトデー” でどこか浮き足立っていた。
早朝から夕方までリンクで滑りこみ、日本での最終調整を行った双子は、篠宮邸へと帰り着くと各々リラックスして過ごし、互いに荷物のパッキングを指さし確認でチェックし合った。
そして家族でゆっくりとディナーを取った後は、楽器を触ったりして早々に就寝する事にした。
ヴィヴィも22時には就寝支度を終え、匠海に挨拶して床に就こうとしたのだが。
「ごめん、ちょっとだけいいか?」
申し訳なさそうにそう尋ねてくる匠海に、ヴィヴィはにっこり笑って兄の傍による。
私室の書斎に通されると、匠海は広いデスクの上に置かれていた木箱をヴィヴィへと差し出した。
「これ、バレンタインデーのお返し」