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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
「2003年はヴィンテージとしての評価も高くて、当たり年らしいよ。だから、双子が成人したら、一緒に飲もう」
「……――っ うんっ! えっと、クリスも一緒に、いいんだよね……?」
どうせなら双子の兄とも一緒に、同い年のワイン酌み交わし、互いの成人を祝いたかった。
兄弟想いのヴィヴィに、匠海は嬉しそうに深く頷いた。
「勿論だよ。あ、でも、ダッドとマムには秘密な? たぶん瞬殺で飲み干されるからな」
長い人差し指を唇の前に添えた匠海が、なんだか可愛らしくて。
「あははっ 絶対そうなるね! 分かった。秘密にしておく~」
明るい声で笑いながら、ヴィヴィはしげしげとワインを見つめる。
クリスとヴィヴィと同じ年のワイン。
後1ヶ月半で18歳になる自分が飲めるのは、まだ2年も先だけれど、それまでの時間、ヴィヴィはその楽しみを胸に秘め、いつか来るその時を夢に見、素晴らしい時を過ごす事が出来るのだ。
なんて素敵な贈り物――。
ヴィヴィは灰色の瞳を輝かせ、ワインから兄へと視線を上げた。
「お兄ちゃん、ありがとう。ヴィヴィ、とっっっても嬉しいっ!!」
満面の笑みと共に礼を述べたヴィヴィに対し、匠海は何故かほっとした表情を浮かべた。
「良かったよ、喜んで貰えて……。ちょっと悩んだんだよな。ほら、ヴィヴィは『お子ちゃま』だから、今すぐ食べられる物の方が、いいんじゃないかって」
「……っ!? なっ そんな事ないもんっ」
兄のからかいにムキになってそう言い返すヴィヴィに、匠海が苦笑する。
「ははっ でもよく考えたら、お前達は明日から試合だし、甘いお菓子をプレゼントされても困るんじゃないかと思ってね」
「うん、確かに……。帰国は1週間以上も先だもんね」
双子が明日から向かうのは、アメリカ コロラド州。
試合が行われるコロラドスプリングスとの時差は-16時間で、そしてそれ以外の懸念材料もあったりする。
「でも、これ……、物凄く高いんじゃない?」
よくよく考えてみれば、ヴィンテージ・ワイン = お高いもの。
経済観念の無いヴィヴィだって、それくらいは知っていた。