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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
いきなり焦ってそう確認してくる妹に、匠海はゆるゆると頭を振ってみせる。
「そんな事ないよ。まだ若いからね。10万円もいかないくらい」
「じゅ……、十分お高いです……。ご、ごめんね? なんかヴィヴィばっかり、いつも高価な物、頂いちゃって……」
常に身に着けている馬蹄ネックレスは、小さいけれどダイヤが埋め込まれた金で出来ているし、一粒ダイヤのピアスなんてもちろん高価だろうし。
白のベビードールは……、うん、どうでもいい。
そこへきて、このヴィンテージ・ワイン。
いくら匠海の方が6歳年上で社会人だとしても、ついでに将来は大企業の社長さんでも、ヴィヴィはなんだか申し訳なくなってしまう。
「馬鹿。俺は自分の給料の全部を、お前に注ぎ込みたいぐらいなのに。でも、そうだな……、お礼にキスの1つくらいは貰っても割に合うかもな?」
そんな冗談を零しながらこちらに向けて両腕を開いて見せる兄に、ヴィヴィは速攻その胸に飛び込んだ。
まだバスを使っていない匠海の胸からは、兄だけの香りが漂ってくる。
それを深く吸い込んでうっとりと瞳を細めたヴィヴィは、背伸びをして引き締まった頬に唇を押し当てた。
「ありがとう、お兄ちゃんっ」
「ん? 頬だけか?」
不服そうな匠海に、ヴィヴィは小さく首を振る。
「ん~ん、今のはネックレスのお礼。で……」
ちゅっとリップ音を立てて吸ったのは、反対側の頬。
「これは、ピアスのお礼」
そして高い鼻頭に落としたキスは、
「これは、サングラスのっ」
はにかんでそう囁いたヴィヴィは、兄の首の後ろに両腕を絡めると精一杯背伸びをし、少し肉感的な唇に自分のそれを押し当てた。
「で、これが、ワインのお礼、だよ?」
唇を離したヴィヴィは、悪戯っぽく笑ってみせた。
けれど、匠海はそれでは不服だったらしい。
「……ベビードールのお礼、は?」
「ありません!」
そう速攻却下したヴィヴィに兄は声を上げて笑い、もう一度妹の唇を味わうように、己のそれを重ねたのだった。
「ワイン楽しみっ やっぱりヴィヴィ、早く大人にならなくちゃ」
兄に抱きすくめられながらうっとりとそう漏らすヴィヴィに、匠海の彫りの深い顔に「しまった」という表情が浮かぶ。