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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章          

「あ゛……、そこまでは考えてなかったな。もう少し可愛い少女のままのヴィクトリアを愛したいから、ゆっくり大人になって下さい」

 まるで頭を下げるように、妹のおでこにこつりと自分のそれを合わせてきた兄に、ヴィヴィは困ったように笑った。

「ふふ。やっぱり、ロリコンなの……」

(さすが、エロ変態絶倫ロリ王子……。でもいいんだ、そういうとこも含めて、お兄ちゃんの全部が好きなんだもん♡)

「馬鹿……。さあ、もう寝なさい。コロラドスプリングス、標高が高くて……。お前達が体調崩さないか、心配だよ」

 匠海の指摘通り、世界選手権の行われるコロラドスプリングスは、ロッキー山脈の東側にあるパイクスピークの山麓に位置し、海抜は1,839m。

 標高約1,800m超は、富士山の5合目よりちょっと高い位置だったりする。
 
 標高が高い = 空気が薄い = 体力を消耗しやすい。

 ただ、空気抵抗が小さいので、平地よりスピードも出やすく、ジャンプもかなり高く飛べるという利点もあったりする。

「大丈夫。向こう着いてからもゆっくりして、睡眠も十分とるから」

 そう囁いたヴィヴィは、最後にもう一度強くハグして貰うと、明日に備えて早々に眠りに就いた。
 






 3月15日(月)。

 成田空港10:45発、シカゴ・オヘア国際空港 経由で、コロラドスプリングス空港へ向かった双子がその地に降り立ったのは、同日の13:31。

 時差-16時間の為だ。

 21時間も機上で過ごした直後にも関わらず、双子は世界選手権の会場であるワールド・アリーナへと直行した。

 本日と明日、公式練習の時間が取られているのだ。

 低酸素状態に身体を慣らしつつ、氷の状態、リンクの縦横比の構造に合わせた演技構成の確認、そしてジャンプをはじめとする幾つもの確認事項――やらなければならない事は山積みだ。

 最高気温は東京都より3℃低いくらいだが、高地のここは寒暖の差が激しく、最低気温は-3℃。

 リンクの空調温度も低く、じっとしていると身体が冷える気がして、ヴィヴィはなるべく小まめに動く様、心掛けていたのだが。

「2人とも。動き過ぎには、注意して」

 翌日の3月16日(火)。

 公式練習へ向かうISUの貸切バスの中、柿田トレーナーの発したその指示に、双子は不思議そうに顔を見合わせる。

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