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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章          

 大歓声の中、絞られていくスポットライトから掻き消されたクリスに代わり、画面に映し出されたのはもう1人の主。  

「世界フィギュアに初めて出たのが、15歳の時だったんですけど……。うん、この2年間……。本当に早かったな、と思います」

 昨夜の女子シングルFPを終えての、ISU公式記者会見でのひとコマ。

 日本代表ジャージを纏いマイクを握り締めながら、しみじみとそう呟いたヴィヴィから、また映像が切り替わる。

『篠宮 ヴィクトリア、初出場から2年、3度目の連覇を賭けた昨日のフリー』

 男性アナウンサーの声と同時に映し出されたのは、昨夜のヴィヴィのFPの総集編。

 冒頭の3回転アクセルを見事着氷した映像とリンクする、ヴィヴィ自身の声。

「最初のジャンプがクリーンに降りられて、「やったぁ!」って。そこで躰の “りきみ” が解けて、後は練習通りに出来るって、直感しました。あと、お客さんの声援も、物凄く後押ししてくれて……。で、調子に乗って酸欠気味になって、最後バテそうになりましたが(笑)」

『そして、その言葉通り。ファンの後押しを受け、篠宮ヴィクトリアは、3度目の頂点に輝いた――』

 授賞式後、花束を持ったヴィヴィにカメラが向けられ、そこへにっこり微笑んで金メダルを掲げてみせる姿が映し出された。

『熾烈な戦いの緊張から解放され、この後に登場――。これまで、シーズン毎に様々な表情を見せてくれる篠宮のエキシビション。高校最後の年に選んだのは、JAZZのスタンダードナンバー、TAKE FIVE』

 男性アナウンサーの声で画面が切り替わり、ホテルの一室で撮られたらしい、ヴィヴィのインタビュー映像が流される。

「エキシビのテーマは “男も女も悩殺できるような娚(おとこ)” 。イメージは、振付けて下さった高畑大輔さんみたいに、観る者の目を逸らさせない色気――? みたいなのが演じられればいいなと。なんたって、ヴィヴィもう、“オトナ” ですからっ!」

 最後は何故かムキになっている様に、そう言い切って破顔したヴィヴィに、テレビ越しに観ていた朝比奈が苦笑した。

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