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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章          

『17歳の篠宮が大人への階段を昇るその姿を、我々は誇らしい気持ちで以て見届ける事でしょう。晴れやかな笑顔で、登場を待ちます――』

 暗転されたリンクサイド、スポットライトの白い光の輪に、一括りにした金髪をシルクハットに隠し、燕尾服の男装をしたヴィヴィが浮かび上がる。

「世界選手権、女子シングル金メダルは、もちろんこの選手――3年連続、頂点に立った、ヴィクトリア 篠宮――!!」

 場内に英語でコールされる自分の名に、にかっと笑ったヴィヴィは、勢い良く暗いリンクへと飛び出して行く。

 リンクをくるりと半周し、位置に付いたヴィヴィに合わせ、曲が流れ始めた。

 放送席の塩原アナウンサーが、

『八木沼さん。今年も我々見るものを楽しませようという、篠宮選手の気持ちが伝わってくるエキシビションナンバーですね?』

 そう解説の八木沼に問えば、

「そうですね。今年は受験の為にショーに出られなかったりと、観られるチャンスも少ないのが残念でしたが。篠宮選手のコケティッシュさを引き出した、いいショープログラムだと思います」

 八木沼の理知的な声が流れる中、シルクハットを被ったままのヴィヴィが、恰好良く3回転を着氷し、場内に歓声が沸き起こる。

『荒河さん。篠宮選手がJAZZを使うのは、初めてですよね?』

 トリノ金メダリストの荒河静香に掛けられる、塩原アナウンサーの問い。

「そうなんですよね。でも本人は相当JAZZに詳しいらしくて。ご両親の教育方針で、よく家族で演奏するらしいんです」

『そうなんですか? じゃあ、クリス選手もですか?』

 塩原の驚いた声音に、荒河が続ける。

「ええ。この『TAKE FIVE』もよく自分達で演奏するそうです。4分の5拍子という特徴的なリズムの曲ですが、タイトルの『TAKE FIVE』は、“5拍子” と “5分程度の休憩をしよう” という、2つの意味が掛けられていると教えてくれました。篠宮選手は『このエキシビ、5分も無いですが(笑) 一緒に楽しんでくれると嬉しいです』とコメントしてくれました」

「ふふ。篠宮選手らしいコメントですね」

 荒河の補足情報に、八木沼が笑う。

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