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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
『コロラドスプリングスという高地での影響、試合にはありましたが?』
『世界選手権3連覇――今のお気持ちは?』
『来シーズンへ向けての意気込みをお願いします』
『どうやって東大受験の時間を、捻出していたのですか?』
『今、自分にご褒美をあげるとしたら、何が欲しいですか?』
大体がそういう質問内容で。
サービス精神旺盛なヴィヴィは、なるべく各社・各番組で異なる返事や言い回しをしようと頑張り。
その結果、ぐったりと疲れ果てていた。
「…………いや、取り上げてくれるのは、嬉しいんだけど、ね……」
白く煙った浴室に、ヴィヴィの擦れた声が小さく響く。
ジュニアからシニアに上がろうとしていた双子に、ジュリアンは “客寄せパンダ” になれと言った。
その時は「実の子供に何てこと言うんだっ!」と憤慨したヴィヴィだったが、今ならその母の気持ちは解る。
スポーツは “人気が命” だ。
視聴率が取れるかどうか、試合やショーのチケットがはけるがどうか。
全てはそれに懸かっており、その結果如何で試合やショーの協賛・後援が決まる。
そして自分達の活動の為の資金も、CMやテレビ等の媒体出演料、スポンサーからの資金提供、グッズ販売で賄っているのも事実で。
ヴィヴィの尊敬する浅田がソチ五輪で引退した時、彼女だけじゃなく “強い日本フィギュア” を支えてきた、高畑・鈴森・小田・大塚も引退し。
一時期は視聴率がガクンと落ち、地上波の放送も無くなった時期があった。
そんな不遇の時代を支えてくれたのが、羽生と村下と宮平だった。
そして14歳で全日本選手権を揃って制覇した双子の活躍で、視聴率が鰻登りしたのと、五輪も迫っていた事から地上波放送が復活し。
今や双子が出る試合の視聴率は、瞬間最高は35%を超える勢いだ。
人々は強い者を応援するのが好きなのだ。
双子はシニアに上がってから、出る試合出る試合、表彰台の頂点を明け渡した事は無い。
(ヴィヴィ……、優勝、出来なくなっちゃったら……、みんな、応援してくれなく、なるのかな……?)