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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
確かに過酷な環境での試合、かつ、世界選手権という一番大きな大会、で常よりテンパっていたのだが。
ホテルでふと1人になると、思ってしまうのは匠海の事。
会いたい、元気な顔を見たい、抱き締めて欲しい、触れ合いたい。
そんな気持ちを誤魔化して、ヴィヴィは遠い異国の地で10日間を過ごしていた。
「俺も、会いたかったよ。昨日テレビを通して見てしまって、余計にヴィクトリアに会いたくなった」
その言葉を体現するように、匠海の大きな掌は布越しにヴィヴィの肩から腰を往復し始め。
大好きな兄にそうされて、ヴィヴィの躰は悦びに震えた。
「えっと……、お風呂、入る……?」
てっきりこの後愛し合うのだと思い、そう発したヴィヴィだったが、匠海の返事は違っていた。
「いや。今日はしない。って言うか、昨日メールしただろう?」
「え……? あ、マッサージ?」
確かに昨夜、兄は『全身マッサージをしてあげよう』とメールを寄越していた。
すっかりセックスのお誘いだと思っていたヴィヴィは、匠海にひょいと横抱きされ、自分の寝室へと運び込まれた。
ベッドに降ろされたヴィヴィは、兄の言葉が本気なのだと確信した。
この後、事に及ぼうとしているのなら、絶対にヴィヴィの寝室ではしないであろうから。
「お兄ちゃんも、仕事帰りなのに……」
夜遅くに帰宅したばかりの匠海にマッサージをして貰うなんて、どうしても気が引けて。
そう戸惑って発したヴィヴィに対し、匠海はスーツの上着を脱いでベッドの縁に掛けると、薄いピンク色のシャツとグレーのタイという姿になった。
「じゃあ、今度、ヴィクトリアが俺のマッサージ、してくれる?」
「え? あ、うんっ するする~っ」
楽しそうな声でそう答えたヴィヴィに、隣に腰かけた匠海が尋ねてくる。
「どんなの、してくれるんだ?」
「ん~~と、気持ちいいの!」
(えっと、肩揉んであげたり、叩いたり? あ、背中指圧すると、気持ちいいかな?)
実際にヴィヴィが誰かをマッサージしたのは、中等部の頃、ダッドに「肩揉んで? オチビちゃん」とせがまれてやったのが最後だった。