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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
「馬鹿。ちゃんと分かってる。気にしてないよ」
「……うん……」
大きな掌で柔らかく頭を撫でてくれる匠海に、ヴィヴィはそう頷きはしたが。
(ヴィヴィの、馬鹿……。本当に、とんでもない馬鹿……っ)
頭の中で、自分を激しく叱責した理由――それは、兄自身にも首を絞め、殺されかけた過去があるから。
「でもお前、なんか肩の辺り、強張ってるぞ?」
全く気にしていない様子でヴィヴィの肩甲骨や肩周辺を指の腹で辿る匠海は、そう心配そうに指摘してくる。
「そう? 移動とか長かったから、凝り固まっちゃったのかも?」
これ以上心配掛けない様にと、つとめて明るい声でそう返したヴィヴィに、匠海は優しく指圧して肩周辺を解してくれた。
「ヴィクトリア……、肩に力、入ってる……」
「え……?」
兄の指摘に、枕に突っ伏していた顔を上げて後ろを振り向くと、少し心配そうな表情を浮かべた匠海がそこにはいて。
「あんまり、色々、抱え込むなよ……?」
「…………、……う、ん……」
(……おにい、ちゃん……?)
「はい、終わり。ちゃんとあったかくして寝るんだぞ?」
ぽんと細い両肩を叩いた匠海は、そう終了を宣言し。
ヴィヴィはゆっくりと上体を起こし、兄に振り返った。
「ん……。ありがとう、お兄ちゃん」
起き上がってみると、本当に身体が軽くなって楽になっているのが分かった。
心から感謝してそうお礼を言ったヴィヴィに、匠海は少し乱れた妹の髪を指先で梳いて撫で付ける。
「どういたしまして。じゃあ、おやすみ」
そう言って自分から手を離そうとした匠海に、ヴィヴィはその胸に飛び込んで甘えた。
「……もう1回……ぎゅっ して……?」
(ごめんなさい……。本当に、本当に、ごめんなさい……っ)
もう一度言葉にして謝ってしまうと、更に匠海の傷口に塩を塗り込む様な気がして、ヴィヴィは必死に心の中で謝るに留めた。
「甘えん坊で本当に可愛いね、ヴィクトリアは」
くすりと苦笑しながらもぎゅっと自分を抱き締めてくれる匠海に、ヴィヴィはありったけの気持ちを込めて囁く。
「お兄ちゃん、大好き……っ」