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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章          

 本当に、貴方が大好き。

 この世でただ一人、自分が異性としての愛を捧げるのは貴方だけ。

 血の繋がった実の兄だけれど、そんな事実では心も躰も抑え付けて誤魔化しが効かなかったくらい、ヴィヴィは貴方以外を欲しくはないの。

 その気持ちのまま胸に埋めていた顔を上げれば、匠海も熱い眼差しで自分を見下ろしていて。

 ゆっくりと降りてくる兄の顔を、目蓋を降ろす事無く見つめ続けたヴィヴィは、少し傾けて重ね合わされた唇にうっとりと瞳を細めた。

 張りのある唇が離れていく感触に両手で兄のシャツに縋れば、至近距離で見つめてくる匠海が静かに囁いてくる。

「俺も、ヴィクトリアが大好きだよ。だから、さっきの事は忘れなさい。いいね――?」

「……うん……っ」

 兄の言葉に素直に頷いたヴィヴィの灰色の瞳から、一筋の涙が零れ落ち。

 それに気付いた匠海は苦笑しながら涙を舐め取り、再度ヴィヴィの唇を奪ってきた。

 今度は長く、深く、激しく。

 自分の口内の全てを舐めて擦りあげてくる兄の舌を、ヴィヴィは従順に受け入れ、微かな喘ぎと共に2人分の体液をこくりと嚥下する。

 首の後ろに小さな何かが這いずり回る様な感触に、ぶるりと細い躰を震わせれば、更に深く蹂躙されて。

 ヴィヴィがくたりと兄の腕の中で脱力してしまうまで、今日の匠海は執拗に妹の口付けを欲しがり、翻弄した。
 
 そのまま床に就いたヴィヴィは、薄れていく意識の中、兄の掌の暖かさを頬に感じながら安堵した。

(そう……。お兄ちゃんがいてくれれば、大丈夫……。ヴィヴィ、何があっても、頑張れるから――)







 その週末――3月27日(土)。

 両親をはじめ、3兄妹はもちろん、真行寺兄妹も揃い、双子と円の東大合格祝いのディナーを囲んだ。

 母ジュリアンはリンクで一度会った事があったが、父グレコリーは真行寺兄妹に会うのは初めてで。

 円の強烈なキャラクターにグレコリーは終始面白そうに笑い声を上げ、困り果てて笑うしかない状態の兄・太一には、ジュリアンが酒を勧めまくっていた。

「機会があれば、太一君と円ちゃんのご両親とも、こうやってお話ししてみたいね?」

 上機嫌の父のその言葉に、ヴィヴィは興味津々の表情で真行寺兄妹を見比べる。

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