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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第26章
皆に見送られながら、匠海の車はスムーズに篠宮邸の門を出ていく。しばらくしてヴィヴィは目の前のナビを覗き込んだが、目的地はセットされていなかった。
「どこへ行くの?」
「内緒」
車は最寄りのICから首都高へと乗り込む。首都高から中央自動車道へ。二十分ほど高速を走り、下りたのは調布ICだった。
「調布飛行場?」
真っ先に目に飛び込んできた看板をそのまま読み上げてみる。
「ではない」
「ん~……国立天文台……?」
次に視線の先に現れた交差点の標識を読み上げる。なんだか宝物探しをしているようで楽しい。
「あはは……。はずれ」
匠海はそう言うと、その交差点の手前で左折した。
(航空宇宙技術研究所……?)
ヴィヴィはまた現れた看板を心の中で読み上げて首を傾げる。道は未舗装の土の道路に代わっていく。そしてその先――ぱっと開けた視界の先に現れたのは、東京とは思えないような緑の牧草地。数軒建つ建物の奥には馬のシルエットが見える。
「あ……!」
やっと匠海の行先を察知したヴィヴィは、小さく声を上げた。そんなヴィヴィを横目に見ながら、匠海は駐車場へと車を止める。ヴィヴィは匠海が空けてくれた助手席のドアから外に出た。
『東京大学運動会馬術部』
そう彫られた木の看板に駆け寄り心の中で読み上げると、後ろからついてきた匠海を振り返る。
「お兄ちゃん……馬術、続けてたんだ?」
「いや、続けてないよ。知り合いがいるから、たまに乗らせてもらってるだけ」
おいでと言われて匠海の後をついていくと、厩舎の隣に作られたログハウス風の部室の前にまわる。ウッドデッキに配されたテーブルでなにやら作業をしていたらしい男子生徒が、匠海に気づいて顔を上げた。
「篠宮さん!? お久しぶりです!」
「久しぶり。少しお邪魔させてもらうよ。高原いるかな?」
「部長? 三十分前位にチャリンコでお昼食べに行っちゃいましたよ」
「なんだ。十三時に着くって連絡しておいたのに、相変わらずだな~」
「あはは、いつものことですよ~。あれ……そちらの可愛い子ちゃんは、もしかして――っ!?」