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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第26章
男子生徒はようやく匠海の後ろに隠れるようにしていたヴィヴィに気付いたようで、身を乗り出して見てくる。実は人見知りの激しいヴィヴィは、初めて会う男子生徒に怯えて匠海の広い背中の後ろから、ちょっとだけ顔を出す。
「ああ。妹の――」
「知ってますよっ! 銀盤の女王……ヴィクトリア篠宮……。うわぁ、本物だ……」
男子生徒はウッドデッキから飛び降りると、匠海とヴィヴィの真ん前に立った。
「初めまして、木川です。うわっ! ほんと、めちゃくちゃ可愛いですねっ!」
木川と名乗ったその生徒は、ヴィヴィに満面の笑みを投げかける。
「こら、ヴィヴィ。ちゃんと挨拶して」
自分の背中の後ろに引っ込んでしまったヴィヴィに、匠海が腕を伸ばして強引に自分の前へとその体を移動させる。
「は、初めまして。ヴィクトリアです」
ぺこりとお辞儀をして起こしたヴィヴィの金色の頭を、匠海がよく出来ましたという風に撫でる。
「あ、もしかして妹さんを乗馬に?」
「そうなんだ。東蓮華(あずまれんげ)に乗せてあげたいんだけれど、大丈夫かな?」
匠海が発した言葉に、ヴィヴィは驚く。てっきり匠海が乗馬をしに来たのだと思っていたのだ。
「もちろん大丈夫ですよ。ああ~、だから高原部長、東蓮華を念入りにブラッシングしてたんですね」
木川は納得したようにうんうん頷くと、二人を部室に案内した。様々な馬具が整然と並べられた部室を、ヴィヴィは興味津々に見回す。
「ヘルメットは使いますよね、ボディープロテクターも。チャブスは必要です……?」
「いや。そんなに乗らないからヘルメットだけで大丈夫かな」
二人がヴィヴィの使う馬具を用意してくれている後ろで、
「あ、着替え……」
ヴィヴィはそこではたと自分の服装を見下ろす。仕立ての良い膝丈のシャツワンピースを纏った自分は、あまりにも乗馬に相応しくない。
「大丈夫。着替えは用意してるから。奥の更衣室で着替えておいで」
どうやら朝比奈に用意させたらしい着替えの入ったバッグを手渡され、ヴィヴィは言われたとおりに更衣室で着替えた。
黒のスキニーパンツに薄手のニットを羽織ったヴィヴィはスニーカーに履き替え、恐る恐る更衣室から出る。
「おっ! 妹ちゃんのお出ましだ」