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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
新入生はまだ入学していないので、日本語で喋っている子もいるが、入学式以降は大学の方針に従う事になる。
ヴィヴィはしょっちゅう呼び止められ、
「ヴィヴィちゃん、おねがいっ! うちに入って!!」
と熱烈勧誘を受けていたが、興味の無いものは笑って誤魔化して逃げ回っていた。
その中で、能楽研究会と狂言研究会に喰い付いたヴィヴィは、まったく興味を示してくれない円は諦め、クリスの手を引っ張って、それぞれの活動内容を聞きに行ったりしていた。
けれどクリスは他のサークルに興味を持ったみたいで、円と他の教室を見に行ってしまい。
暇なヴィヴィは、すれ違うクラスメイトと雑談したりしていたのだが。
『東大うどん部』
その立て看板を目にしたヴィヴィは、何故か吸い寄せられる様にそのブースへと入って行った。
折り畳み式の長机の前、パイプ椅子に座った男子生徒が、入って来たヴィヴィを眼鏡越しにじいと見ていた。
「うどん部って、何するんですか?」
初対面にも関わらず、率直にそう尋ねたヴィヴィは、その生徒にパイプ椅子を勧められ、ちょこんと腰を下ろし男子部員と対峙する。
「東大うどん部の普段の活動には。主に2つあります」
何故か下級生のヴィヴィに敬語で喋る部員に、ヴィヴィはこくりと頷く。
「うどんを食べる事と、うどんを作る事です」
「そのまんまですね?」
ヴィヴィの突っ込みに、部員は静かに頷く。
「うどんを作るときには、小麦粉を買ってきて、生地を打つ段階から始めます」
「へえ、本格的ですね。食べに行くのは?」
少し感心したヴィヴィに、部員は平坦な声音でとつとつと続ける。
「正式な遠征は月に1回くらいですが、突発的な遠征も入れるともっと多くなる時があります」
「どこに食べに行くのですか?」
「東京のうどん屋に行って、食べたら解散です」