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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
左右の腕を腰の捻りと共に旋回させてから両肩を大きく持ち上げ、粋がった伊達男を演じる。
バタフライからのシットスピン。
そしていつもは絶対にしないショットガンスピン(まさにショットガンを構えるように、フリーレッグを両手で支えるスピン)は、男子が好む技。
A字スピン(両脚を伸ばして前屈、両足首を掴みA字になる)を綺麗に描いて回りきると、鼓膜を大きな歓声が震わせた。
『僕はわざわざ 回り道をして
貴女と毎日 会えるようしているのに
僕たちは一言も 言葉を交わしたことがないですよね
まるで無言の パントマイムのように……』
スパイラルの最中、フリーレッグのトウにシルクハットを引っかけると、一括りにしているヴィヴィの金色の髪がスポットライトに映える。
そしてシルクハットを胸に抱きこみながら踏み切ったのは、3回転フリップ + 2回転アクセルのコンビネーション。
『よく目が合っているのを 僕は気づいてますよ
けれど貴女と視線が合うと
足の先まで 躰がゾクっとするのです』
ジャンプの流れの中、シルクハットを高く持ち上げながらのドーナツスピン。
そしてハットを乗せた胸を逸らしながら回る、レイバックスピンへ。
ひらひらはためく漆黒のスワローテイル(燕尾)を脱ぎ捨てたヴィヴィは、胸に縦ひだが入ったノースリーブの白シャツに白の蝶ネクタイ、黒のサスペンダーという身軽な姿で、きれっきれのステップを踏んでいく。
『でも そのクールな微笑みは
誰も寄せ付けようとは しないもので……』
途中脚を止め、被っていたシルクハットを高く放り投げたヴィヴィは、サスペンダーを両手で前に引き伸ばしながらニヒルに嗤うと、また勢いを増してステップを踏んでいく。
『そんなにかしこまらなくても いいじゃないですか?
タバコに火だって 着けますよ
ねえ たわいもない話から 始めましょうよ』
リンクの端から端まで使ったステップの締め括りは、身体の正面で大きく開脚した大胆なジャンプ。