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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
最後はやはり柔軟性を如何なく発揮できるI字スピンを回り、スクラッチスピン(回転軸にフリーレッグを交差させる)で高速回転で締め括れば、会場のボルテージはヒートアップし。
『It's alright just “TAKE FIVE”.
大丈夫、5分だけですから
Just “TAKE FIVE”.
5分だけですよ――』
歌詞を口ずさみながら、トウで拾い蹴り上げたシルクハットの両隅を摘まんだヴィヴィは、「くるりんぱ」と心の中で言いながら胸の前でそれを回転させ。
髪を縛った金色の頭にのせたハットの下、まるで「し~」と言うように、人差し指を弧を描いた唇の前に当て、格好をつけてフィニッシュする。
割れんばかりの大歓声の中に、何故か笑い声が混じっているのは――うん、気にしないでおこう。
スポットライトも消え、暗転したリンクで上がった息を整えるヴィヴィに、アンコールが巻き起こり。
いつも通りSPのステップを披露したヴィヴィには、惜しみない拍手が送られた。
1夜漬けで振付けて貰った、国別の団体ごとのエキシビを楽しみながら皆で滑り。
5日間に渡った国別対抗戦は、無事に終わりを告げた。
――と思っていない人物が、1人だけいた。
いや、正確に言うと2人か。
16時に終わったエキシビションの後、取材等を熟した双子が篠宮邸に帰り着いたのは、21時過ぎで。
夕食も終えていたので明日の入学式に備え、双子は就寝挨拶を交わすと私室へ引き上げた。
朝比奈に手伝って貰って荷物を片し、湯を使い。
執事を下がらせた頃に現れた匠海に、ヴィヴィはわざと きょとんとした表情を浮かべた。
「お兄ちゃん、ヴィヴィ、もう寝るね?」
「寝かせません」
兄の予想通りの返事に、ヴィヴィはこてと金色の頭を倒す。
「え~~、だって明日、入学式だよ?」
「まだ22時だろう。ほら、来なさい」
「………………」
渋々といった様子で兄の傍に寄って行けば、案の定、匠海はヴィヴィを妹のウォークインクローゼットに閉じ込めてしまった。
「言わなくても解ってるだろう? さっさと着替えて出て来なさい」