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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
「え? 何のこと?」
そうしらばっくれれば、
「……~~っ お前が昨日着ていた “露出度の高いワンピース” を着て、出て来なさいと言ってるんだっ」
昨日、試合後に行われたクロージングバンケット。
そこで着ていたワンピが、匠海には気に食わなかったらしい。
スケ感のあるふわふわ素材でフレンチスリーブの、ミントグリーンのシャツワンピ。
まるでミントチョコアイスの様に、襟元に結ばれた焦茶色のベロアリボンがアクセントの、至って普通のワンピだった。
ただその裾の長さは、見る人によっては「ミニを通り越したマイクロミニ?」と思ってしまうくらい、短かっただけで。
「え~~……、えっちな事、しない?」
「~~~っ するに決まってるだろうっ!?」
そう一喝されたヴィヴィは、内心笑いを噛み殺しながら、いそいそと渦中のワンピに身を包み。
クローゼットから出て来た妹を抱っこした匠海は、速攻自分の寝室へと連れ込み。
ヴィヴィが、「ごめんなさいぃ~~っ」と喘ぎ疲れた声で謝るまで、思う存分その躰を味わったのだった。
「ふわわ……」
翌日の4月12日(月)。
日本武道館の1階席で、ヴィヴィは掌の中にあくびを噛み殺していた。
「ヴィヴィ……、こら……」
隣に腰掛けていた濃紺のスーツを纏ったクリスが、ヴィヴィを「めっ」とねめつけて窘めてくる。
「ごめ~~ん」
ヴィヴィは小さくそう言うと、ぺろっとピンク色の舌を出し、黒のスーツの肩を竦めた。
東京大学の入学式 当日。
だと言うのに、もう5回も駒沢キャンパスに訪問していたヴィヴィには、なんだか “いまさら感” があったのだ。
ステージ上では、濱田総長が人好きのする温和な微笑みを湛え、新入生への激励の挨拶をしていた。
その様子は、双子に「スケート部所属と引き換えに、クラス分けの便宜を図ってやろう」と唆してきた人物と同じ人間とは思えない。
そんな酷い事を思いながら、ヴィヴィはまたあくびする。
双子がこれからの2年間席を置く、教養学部 部長のありがたい挨拶も退屈で。
(日本の入学式って……なんか、つまんない……)
1年半辛酸を舐め、なんとか入学出来たというのに、ヴィヴィの思考はこの場から違う事へと移ろって行く。