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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第26章
いつの間にか増えていた男子生徒にヴィヴィはまた人見知りを発揮し、扉に半分隠れてしまう。
「怯えてる……可愛いなぁ~~! 怖くないよ~、出ておいでぇ~」
その初見の生徒は妖しさ全開の笑顔でそう言って、ヴィヴィを手招きする。
「いや、高原部長……怖いですから……」
木川が呆れた顔でそう突っ込む。目の前の人物が匠海の言っていた高原だと分かり、ヴィヴィは扉から離れて皆の前に行くとぺこりとお辞儀をした。
「えっと……ヴィクトリアです。いつもお兄ちゃ――兄、がお世話になっております」
「いや、ヴィヴィ……。どちらかと言えば俺のほうが高原の『お世話』してるから」
「なにおう! 確かに代返してもらったり、ノート貸してもらったり、レポート写させてもらったり、卒論手伝わせたりしてるけどな!」
高原はそう事実を並び立てると、にかっと人好きのする笑顔を匠海に向ける。
「高原部長……農学部の卒論、経済学部の篠宮さんに手伝ってもらってるんですか?」
「ああ、こいつ手先器用だがらな~。でも、あれだぞ。ちゃんと白衣は俺が自腹で用意してやったぞ?」
全然自慢にならないことを得意げに言う高原の言葉に、ヴィヴィは目をぱちくりとさせる。
「お兄ちゃんの、白衣姿……?」
(み、見たい……っ!)
小さく呟いたヴィヴィのその言葉に気付いた高原が、スマートフォン片手に「写真見る~?」と近づこうとしたが、その首根っこを匠海に掴まれた。
「まったく。人が手伝ってる隙に、写真なんか撮るなよ」
「え~……匠海ファンの女子に売りつけたら、儲かるかなと思って」
そんな軽口を叩いている匠海をヴィヴィはにっこりと見つめる。そのヴィヴィの手を掴んで「もういい。東蓮華、借りるよ?」と言い捨てて、匠海は外へと連れ出した。二人の背後からは「お~! いくらでも乗ってくれ」と能天気な高原の声が追っかけてきた。
「お兄ちゃんファンの、女子……?」
手を引っ張られて鼓動を早めつつも、ヴィヴィは高原の気になる一言を反芻する。
「そんなもの、いないって」
苦笑した匠海は厩舎へと入るとヴィヴィの手を放した。そしてその頭に黒い乗馬用ヘルメットを被せると、馬の説明を始める。