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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
そんな中でも、双子は来シーズン(というか、もう今シーズン)のプログラムの曲も、決めなければならなくて。
互いに映画のサントラを聞いたり、歌劇やバレエのDVDを観たり、色んな音源や映像を漁る日々が続いていた。
意外や意外、ヴィヴィは世界選手権を終えた頃にはもうFPの曲は決まっていて。
そして振付けて欲しい振付師も、選び終えていた。
難航したのはSPの選曲で。
「うんうん」唸っていたヴィヴィに、妹のFPの選曲を知ったクリスが、とても素晴らしい提案をしてくれた。
そうして決まったプログラムの振り付けの為、双子は4月29日(木・祝日)~5月5日(水)の7日間、アメリカのデトロイトへと揃って旅立ったのだった。
今シーズン、双子がFPに選んだ曲。
それは、映画『シャネル & ストラヴィンスキー』。
2人揃って同じシーズンに、互いのFPでこの曲を使う。
男子と女子のシングル選手が同じシーズンに選曲が被る事ならたまにあるが、それが双子で “互いに意識して合わせてきた” のだから、これは前代未聞だろう。
ただ、真相はというと、
「これ、FPで使うんだ~♡」
ヴィヴィが嬉しそうに、クリスに映画のサントラを見せたところ、
「いいね……。僕も、そうしようかな……」
「………………へ?」
咄嗟には何を言われたのか分からなかったヴィヴィだったが、クリスが本気である事を知り。
「双子で同じプログラムを、各々演じられるなんて、とっても素敵かも――!」
と最後にはノリノリになったのだった。
そんなこんなで、双子が以前から目を付けていた振付師――パスカール=カメレンゴに、この責任重大な振り付けの白羽の矢が立った。
パスカール=カメレンゴ。
アメリカのデトロイトSCを拠点とする、売れっ子振付師。
現役時代はアイスダンス選手で、五輪5位の実力者。
振付師としては、高畑 大輔の2010年のFP『道』で一躍有名となり。
そして2012年の、鈴森 明子のFP『オー(by シルク・ドゥ・ソレイユ)』も彼の手によるものだ。
双子がカメレンゴに振付を依頼した時、彼は電話口で物凄く興奮し「ぜひ、やらせてくれっ!」と快諾してくれた。