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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章

彼のプログラムは、他の振付師とは少し毛色の違う、個性的でセンスのある振付が特徴的。
一言で表すと “お洒落” 。
そして勿論、ジャッジからも高い評価を受けている。
7日間みっちりと時間を取れたことから、双子はそれぞれの編曲から、カメレンゴと話し合いながら決め。
互いのこだわりが存分に詰まった、素晴らしい振付が完成した。
そして、その7日間の間に互いに誕生日を迎えた双子は、18歳になった。
デトロイトのみんながバースデーを祝ってパーティーまでしてくれて、本当に楽しんで充実した時を過ごせたのだが。
それ以上に、ヴィヴィの心を躍らせた出来事があった。
5月2日(日) ヴィヴィの誕生日のその日。
匠海から1通のメールが届いた。
『Happy Brithday ヴィクトリア。
とうとう18歳になったね。
まあ、何歳になっても、
俺にとってのお前は “可愛い子” だけどね。
お前にとってこの1年が、
さらに輝かしい年となる事を、
心から祈っているし、
その手伝いを俺にもさせて欲しい。
愛しているよ。
追伸 : 今日、咲きました』
(今日、咲きました……?)
兄のメールの一文一文に幸せを噛み締め、涙を浮かべていたヴィヴィだったが、その追伸の言葉に微かに首を傾げた。
そして、画面をスクロールしていった先に映し出されたのは、
「……~~~っ!!!」
絶句したヴィヴィの灰色の瞳に映っていたのは、薄黄色の花弁の先に薄紅色の縁取りがなされた薔薇。
昨年の10月10日。
BSTの学園祭があったその日の夜、匠海はヴィヴィを庭に誘い出し、この薔薇を植えた事を知らせてきた。
その頃のヴィヴィは、匠海から葉山で告白され、全力で兄の事を拒絶していた時期だった。
『ペール・ギュント』
2シーズン前、ヴィヴィがSPで使用した戯曲の名が付けられた、可憐な薔薇だった。
「……きれ、い……っ」
ヴィヴィの薄い唇はそう言葉を零した後、ひくひくと震えて微かな嗚咽を漏らした。
大きな瞳から零れ落ちる涙を、止める事が出来なくて。
それらはもちろん、嬉しさ、安堵、兄への感謝と愛情で生み出された物達。

