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禁断の果実 ―Forbidden fruits― 第1部
第105章
本当に自分達は、このまま一緒に添い遂げられるのだろうか。
いつかどこからか2人の関係が知れて、糾弾され、引き裂かれるのではないだろうか。
もしかしたら、第三者によってではなく、当の匠海自身が、ヴィヴィに愛想を尽かして――。
どんどん後ろ向きな思考になっていくヴィヴィは、はっと我に返り、鏡の中の自分を苦しそうに細めた瞳で睨みつける。
「……どうして、こんな事……。考えてしまうの……?」
こんなに愛し愛されているのに。
日々幸せを感じているのに。
どうしてこんなに、2人の行く末に怯えてしまうのだろう。
以前の自分は、両想いになり 恋人になれたらそこがゴールで、その先に待ち受けるのは幸せだけ――そう、思っていた。
けれどそうじゃなかった。
目も眩むほど幸福だけれど、そこには常に不安が隣り合わせ。
「………………」
(周りの恋人達も、そうなのかな……。みんなこの不安と、闘ってるのかな……。それとも……。ヴィヴィとお兄ちゃんが、兄妹だから、特殊なの……?)
血の繋がった兄妹だから?
結婚出来ないから?
子供が作れないから?
そんな事、初めから百も承知で、それでも兄を愛して、愛し続けてきたのに。
ぎゅうと内側から捻り上げられたかの様に苦しさを訴えてくる胸に、ヴィヴィは薄い生地を両腕で握り締めた。
その時――、
コンコンというノック音と共に聞こえたのは、愛しい兄の声。
「ヴィクトリア? 着替えられた?」
軽くシャワーを浴びてくると出て行った兄が、寝室に戻って来たのだ。
異様に着替えに時間が掛かるヴィヴィが心配になったのか、その兄の声音はとても優しく気遣ったもので。
「……~~っ」
くしゃりと顔を歪ませたヴィヴィの脳裏に、2ヶ月前の匠海の言葉が蘇える。
『幸せ過ぎて……怖い……』
そう無意識に呟いてしまったヴィヴィに、匠海は何度も根気強く諭してくれたではないか。
『馬鹿……。幸せなのに、何が怖いって言うんだ?』
『俺の愛している女は、俺が全身全霊で幸せにしてやる。そして……』
『そして、いつか不幸になるかもしれないと脅えている時間があるなら、その時間を俺を愛する時間にまわしてくれ』